小林麻央さんも最期は自宅で……「家で死ぬ」を叶えるために必要なものとは

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終末期の在宅ケアは家族の介護負担が2倍に!「家で死ぬ」望みを叶えるために必要なものは?の画像1

在宅介護を担う家族が倒れたら元も子もない(depositphotos.com)

 人生の最期をどこでどんなふうに迎えるか――。この誰もが抱く問いかけに、ひとつの理想形を見せてくれたのが、今年6月に若くして乳がんで亡くなったフリーアナウンサーの小林麻央さんだ。

 麻央さんは亡くなる約1カ月前に退院し、在宅でケアを受けることを選んだ。ブログには息子のお手伝いで足湯に浸かったり、母親の搾ったオレンジジュースを楽しむ様子が綴られ、住み慣れた家で最期まで明るく過ごした様子が伝わってくる。

 入院生活の制約から解放され、旅立つ直前まで思い思いに過ごせるのが在宅終末期医療の良さだ。心身共にリラックスできるためよく眠れるようになり、食欲も出て、結果的に医師の見立てより長く頑張れる患者も珍しくないという。

 半面、終末期の在宅医療は、患者の家族の負担がどうしても大きくなる。入院治療では日常のケアを看護師が行うが、在宅の場合は食事や服薬の世話まで家族がサポートする必要がある。特に終末期の患者となれば、容態が急変した緊急時の不安も大きい。

 終末期在宅医療での、介護者の負担とはどれほどなのか――。それを客観的に示した研究結果が、アメリカの医学誌『Health Affairs』7月号に掲載された。

終末期は介護時間が週に60時間超にも!

 米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のKatherine Ornstein氏らが、高齢者約2400人とその介護者のデータを分析したところ、「終末期に介護者が介護に費やした時間は、終末期以外での介護の約2倍」にも上ることが明らかになったという。

 海の向こうアメリカでは、家族を中心とした「無償の介護者」が高齢者や終末医療の在宅介護を担うことが珍しくない。日本のような皆保険制度はないが、在宅介護で金銭的に困難になった場合は、低所得者支援である「メディケイド」の対象となり補助が得られる。

 また65歳以上の人は、公的な医療保障制度である「メディケア」の補助を受けることができる。

 しかし、それらを除けば、アメリカの介護サービスは「家族介護」と「自己負担」によって賄われている。さらに、施設でのケアを重視してきたメディケアやメディケイドの介護給付も、近年の財政逼迫に伴って施設から在宅ケア重視へと転換しつつある状況だ。

 米国介護連盟と、全米退職者協会(AARP)が2015年に実施した調査によると、過去12カ月以内に50歳以上の高齢者に対して無償の介護を提供したアメリカ国民は3400万人を超え、その多くは女性だ。

 一方、終末期の介護に家族などの無償介護者がどの程度関わっているのかについては、これまでわかっていなかった。

 そこでOrnstein氏らは今回、65歳以上の高齢者とその介護者に対して行われた調査を用い、終末期の高齢者(調査から1年以内に死亡)と、終末期ではない高齢者との間で、ケアを担う介護者の数、介護に費やす時間などを比較した。

 その結果、終末期の高齢者ひとりを介護する「介護者数は平均2.5人」で「週当たりの介護時間は61.3時間」。これに対して、「終末期ではない高齢者では週当たりの介護時間は35.5時間」だった。

 また「介護にあたって身体的な困難がある」と回答した介護者は、終末期を迎えた高齢者介護では35%を占めていたが、それ以外の高齢者介護では21%にとどまっていた。「自分のための時間がない」と回答した介護者の割合も、前者では51%に上っていたが、後者では21%だった。

 なお、介護者の約9割が報酬のない「無償介護者」だったが、それが配偶者である場合、ほぼ3分の2は他の家族や友人などによる支援を受けずに、ひとりで介護を担っていたこともわかった。

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