世界的に増加する性感染症の実態 前編 あおぞらクリニック新橋院内田千秋院長

コロナだけじゃない。世界中で毎年新たに3億7000万人超の性感染症

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世界的に増加を続ける性感染症の実態は?

 性感染症の症例は毎日100万件。
 世界保健機関(WHO)が昨年発表したデータによると、15~49歳の期間に、世界中で毎日新たに100万人を超える性感染症があるという。推計では性器クラミジア感染症(1億2700万人)、淋菌感染症(淋病)(8700万人)、梅毒(630万人)、トリコモナス(1億5600万人)と4感染症だけで 毎年3億7600万件を超える計算になる。さらに5億人以上が性器ヘルペス感染症に、約3億人の女性が子宮頸がんの主な原因であるHPV(ヒトパピローマウイルス)感染症に、2億4000万人が慢性B型肝炎を患っていという。しかも2012年の最後に公開されたデータ以降、新規または既存の感染率のいずれにも実質的な減少はない。

 いうまでもなく性感染症とは主に、膣、肛門、オーラルセックス(フェラチオ・クンニリングス・リミング)を含む性的接触を通じて広がる。そのほかは感染した血液や血液製剤との接触や注射による薬物使用を通じて感染することもある。

総数は減少傾向だが特定の病気は増加傾向に

「かつて日本では『性病』と呼ばれていたのは昭和23年に制定された『性病予防法』によるため、梅毒,淋疾,軟性下疳,鼠径リンパ肉芽腫の4疾患が対象になっていました。現在では『感染症新法』(1998)に引き継がれ、厚生労働省によると、梅毒、淋病のほかに、クラミジア、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、HPV感染症、HIV/AIDSなどが主な性感染症となっています」と説明するのは都内で性感染症専門のクリニックを開業しているあおぞらクリニック新橋院の内田千秋院長。

「日本では公衆衛生政策がうまく機能しているためか、島国という地勢が影響しているのか性感染症の総数は2000年初頭をピークに次第に減少してきています」としながらも油断はできないと続ける。
「そもそも性感染症のことは意外に知られていないと思います。自分とは関係がないものという先入観があるのかもしれません。
 2000年代に入ってから注目されているのは梅毒の急増傾向。HIV/AIDSも高止まり状態が続いています。さらにコンジローマ、クラミジアなどが増加傾向になります。一方、原虫という肉眼では見ることのできない生物が炎症を起こすトリコモナスは世界的には常に1、2位を争うぐらいの感染数となっていますが、日本では意外に少なくなっています」と説明する。

新しく注目されてきた性感染症もある。

「2008年に、子宮頸がんや陰茎がんと関連があるということが判明して以降注目されるようになったのがHPVです。がんに関係しているといわれる高リスク型と尖圭コンジローマに関係している低リスク型の2種類あります。性行為の経験がある約80%の女性が50歳までに一度は感染するといわれるほどありふれたウイルスです。低リスク型HPVに感染すると、性器や尿道・膣・肛門などに鶏のトサカあるいはカリフラワー状のイボ(尖圭コンジローマ)が現れることがあります。
また、知名度は低いですがマイコプラズマ・ウレアプラズマなど比較的新しい感染症も2012年から日本でも検査が可能になり、クラミジアや淋病と同じように高い感染率が認められています」(内田院長)

内田千秋(うちだ・ちあき)

あおぞらクリニック新橋院院長。1967年、大阪市生まれ。96年、東京医科歯科大学を卒業し、同大第二外科入局。癌研究会附属病院、東京都立墨東病院、東京都多摩がん検診センターなどに勤務後、2013年、「あおぞらクリニック」を開業し院長。日本性感染症学会会員、日本エイズ学会会員、日本性機能学会会員、日本抗加齢学会専門医ほか。趣味は「猫」(フェイスブック「ネコっていいね!倶楽部」主宰)。

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内田千秋
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