私は職業上、小学生や中学生の運動指導を行うことがよくある。そのときに驚くのは、子どもたちの身体の固さだ。むしろ、親子行事で柔軟性のチェックを行うと、30〜40代の親のほうが柔軟性が高く、体も意外に良く動く。
これは「ストレッチ」のフレーズだけが先走りして、学校教育に浸透していない証拠だ。体育教師のストレッチを行う目的の理解も、十分ではないように思う。
わかりやすく説明すれば、運動前は、これから動くための準備のための「動的ストレッチ」である「準備体操」が必要。そして運動後は、疲労した身体を整える「静的ストレッチ」である「整理体操」が必要。いたってシンプルだ。
トップアスリートが、試合前に時間をかけて念入りにストレッチでカラダを調整する。これは自分のカラダを知っている一流選手だからこそ効果があるが、普通の人が知識のないまま、時間をかけて静的ストレッチを試合前にやったとしたらどうなるだろう?
ストレッチでカラダを動かすことで、さらにカラダは動くための準備をする。しかし、止まってゆっくりじっくりと筋肉を伸ばしてしまったら、副交感神経の働きが強くなり、リラクゼーション効果が高まり、カラダはゆっくりと休もうとする。これでは良いパフォーマンスを試合で出せない。
ストレッチにはいろいろあるが、まずはその目的に応じて使い分けること、そして正しいやり方で行うことが重要だ。スポーツやフィットネスの分野に限らず、最新の理論や言葉に左右されずに、もっと生活や学校教育に根ざすべき「大事なもの」がある。せっかくの良いものも活かされないような気がする。もっと文化にしていかなければならないのではないか。