連載「頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた」第26回

かき氷頭痛・アイスクリーム頭痛はどうして起きるのか? 最新知見から考える

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かき氷を食べると頭が痛くなる!

 夏は、氷やアイスクリームが欲しくなる季節ですよね。でも氷を食べると、よくあるキーンとした頭痛を経験することがあると思います。この頭痛は、簡単に「かき氷頭痛」と呼べば、いいのですが、医学的には、「アイスクリーム頭痛」と呼ばれたり「寒冷刺激による頭痛」と呼ばれたりしています。

 国際的な頭痛分類では、「外的要因による頭部の寒冷刺激」や、「冷たいものの摂取または冷気吸息による頭痛」として記されています。多くの人が、かき氷などの冷たいものを口腔内に入れた時に、よく経験する頭痛であり、広く認識されていますがこの原因はよくわかっていません。

 近年、分子遺伝学的な研究から、温度センサーであるTRP(transient receptor potential)チャネルとの関連が注目されており、いままでの情報に加えて、新たにわかってきたことをお伝えしたいと思います。

固体より液体のほうが発生しやすいアイスクリーム頭痛

 アイスクリーム頭痛は、多くの人が経験あるように生理的な頭痛として位置づけられていることが多く、通常は自然に軽快することが多いとされています。

 13~15歳の若年層の男女を対象に8500 人を調査した報告(※1)では、アイスクリーム頭痛の調査での性差は 女性(約35-39%)よりも男性(41-46%)に頻度が多く、30%~40%の人が経験します。ところが、一般成人になると、この頭痛は15%前後まで低下します。つまり大人になるとアイスクリーム頭痛を起こすことが少なくなることが考えられます(※2)。

 氷水と氷ブロックという液体と固体の比較では、氷水の方が発生する頻度が高くなっています。液体の方が上下咽頭をより早く冷却できるために頻度が高くなると考えられます(※3)。実際、かき氷でも最後のシャーベット状のものを飲み込む方がアイスクリーム頭痛を来すことを、みなさんも経験されているのではないでしょうか。

西郷和真(さいごう・かずまさ)

近畿大学理工学部生命科学科ゲノム情報神経学准教授、近畿大学医学部附属病院神経内科。1992年、近畿大学医学部卒業。近畿大学附属病院、国立呉病院(現国立呉医療センター)、国立精神神経センター神経研究所、米国ユタ大学博士研究員(臨床遺伝学を研究)、ハワードヒューズ医学財団リサーチアソシエイトなどを経て、2003年より近畿大学神経内科学講師および大学院総合理工学研究科講師(兼任)。2015年より現職。東日本大震災後には、東北大学地域支援部門・非常勤講師として公立南三陸診療所での震災支援勤務も経験、2014年より現職。日本認知症学会(専門医、指導医)、日本人類遺伝学会(臨床遺伝専門医、指導医)、日本神経学会(神経内科専門医、指導医)、日本頭痛学会(頭痛専門医、指導医、評議員)、日本抗加齢学会(抗加齢専門医)など幅広く活躍する。

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