連載・知られざる漢方薬パワーの実像①

前年の5倍ペースで患者急増!今年のインフルエンザ対策は漢方薬に注目

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前年の5倍ペースで患者急増!今年のインフルエンザ対策は漢方薬に注目の画像1意外に知られていないインフルエンザに対する漢方薬の有効性

 毎年この時期になると「インフルエンザ」が猛威をふるい始めます。今年は新薬として1回飲みきりタイプの抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ」が登場したことで、インフルエンザ治療の選択肢が一つ増えました。

でも、今回紹介するのは決して新しい薬とは言えない「漢方薬」です。実はインフルエンザと漢方には古い歴史があり、インフルエンザのときこそ漢方薬の出番と言っても過言ではありません。

 そこで今回はインフルエンザ治療において漢方薬に期待できる効果とその活用法をご紹介します。

今年は例年より流行ピークが早い?!

 インフルエンザは、通常1~4日間の潜伏期間を経て、突然の発熱(38℃以上の高熱)、関節痛などが特徴で、自然治癒で1週間程度で回復することがほとんどです。一般のかぜと似た症状ではありますが、重症化しやすい小児やお年寄りは十分に注意すべき疾患でもあります。

 例年であればインフルエンザの本格的なピークは1月下旬〜2月上旬ですが、今年はそれが前倒しになったことで流行期が長引くかもしれないと予想されています。流行が早まった理由については今年秋に開催されたラグビーW杯で多くの外国人が入国したことが原因という指摘もあります。インフルエンザ患者数は今年1月に入ってから少し減少傾向が見られる地域もありますが、流行期である2月にかけて患者数が増えていく可能性もあるので油断はできない状況です。

 今後、全国的な流行が広がってピークを迎えるにあたって、十分に予防すること、万が一罹ったときの対処法を今から備えておくことが大事です。

新薬を選ぶべきかは慎重に判断すべき

 万が一、インフルエンザを疑う症状が出た場合に、多くの患者さんは急いで病院を受診します。標準治療では抗インフルエンザウイルス薬が投与されることが多く、タミフル、リレンザ、イナビル、さらに今年発売された1回飲みきりタイプのゾフルーザが注目を浴びています。

 抗ウイルス薬は症状に応じた対症療法ではなくウイルスの増殖と広がりを抑えることで効果を発揮する薬です。効果を確実にするには、処方された日数を正しく飲み切ることが非常に大事です。とくに、 高齢(65歳以上)、小児(5歳未満)、 妊娠、呼吸器疾患があるなど、ハイリスクな方の場合は重症化しやすいため適切な治療を早期に受けることが必要です。

 一方で、若くて健康な人であればインフルエンザは自然治癒できる病気で、必ずしも抗インフルエンザウイルス薬を服用しなければ治らない病気ではありません。高い熱(38.5度以上)や下痢など強い症状がなければ、安静を中心として水分補給と栄養補給を心がけます。また、抗インフルエンザウイルス薬の効果は高熱の状態を約1日短縮させる程度という報告もあり、作用などのデメリットも考えて、使用については慎重な判断が求められます。

 多くの人が病院を受診することでウイルスを拡大させるリスクや耐性ウイルス出現の問題もあるため、インフルエンザが疑わしいときに早急に受診する必要があるかどうかは意見が分かれているようです。もちろん、抗インフルエンザウイルス薬の使用が望ましいと判断されることもあり、使用するかどうかは専門的な判断が必要です。医師に相談の上で判断された方が良いでしょう。

 また、今年もすでにインフルエンザに感染した10代の異常行動に関するニュースがあったことは記憶に新しいところではないでしょうか。異常行動については原因がまだ解明されておらず、服薬とは関連性が無いという説もあります。そのため、現時点では抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無又は種類にかかわらず注意が必要とされています。

 ただし、新薬の場合は、使用経験が浅いことからも、異常行動に関わらず予期せぬ副作用が出る可能性は否定できません。また、1回服用タイプの場合は半減期が長いため体内に長く残り、副作用が起きた場合のリスクは大きくなります。むやみに新薬に飛びつくのではなく、メリットとデメリットを理解した上で正しく選択することが必要でしょう。とくに小児においてはインフルエンザ脳症という重篤な状態に進行する可能性もあるため、医師からの説明を十分に受けた上で、薬の使用について慎重な判断が求められます。

笹尾真波(ささお・まなみ)

一般社団法人日本薬業研修センター漢方講座執筆・編集
漢方アドバイザー養成講座アドバイザー(国際統合治療協会)
ロイヤル漢方クラブあんしん漢方認定薬剤師
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