運動の前後でストレッチの方法も異なる(shutterstock.com)
「ストレッチ」という言葉は、スポーツにさほど興味がない人にもすっかり定着している。近年、全国各地にストレッチ専用店が誕生し、すでに飽和状態でクローズした店舗が現われているほどだ。
そもそも「ストレッチ」とは何なのか? 「ストレッチ(Stretch)」を辞書で調べると「伸縮すること、競技場、競馬場などの直線コース、ストレッチ体操の略」とある。スポーツや医療分野では「体のある筋肉を良好な状態にする目的でその筋肉を引っ張って伸ばす」ことを意味する。
ストレッチは、筋肉の柔軟性の向上、関節の可動域の拡大のほか、さまざまなメリットをもたらす。なお、ここでの筋肉とは、骨格筋のことを指す。
ボブ・アンダーソンの『STRETCHING』の衝撃
ストレッチという言葉は、1960年頃、米国で発表されたスポーツ科学の論文で使われ始め、1970年代後半から急速にその概念が広がった。 ボブ・アンダーソンの著した『STRETCHING』(1975年)が、その普及を大きく促進したといわれ、彼が提唱した「静的ストレッチ」は現在も広く用いられている。
ストレッチには「静的ストレッチ」以外にも、筋肉の伸張・収縮を繰り返す「動的ストレッチ」、リハビリテーションの手法を取り入れた「PNFストレッチ」などがある。今日、ストレッチはスポーツにおけるウォーミングアップ、クールダウンで盛んに行われ、重要な役割を果たしている。
1985年頃、私が大学3年生のときに、ボブ・アンダーソンの『STRETCHING(邦題は「ボブ・アンダーソンのストレッチング」)』(ブックハウス・エイチディ)を初めて目にした。アンダーソンが本を書いてから10年も後のことだ。「これが最新のストレッチというものか」と興奮したことを覚えている。そして、友だちと見よう見まねで勉強した。
私は大学卒業後、東京の実業団バレーボール部に所属した。当時、監督から「お前、体育学部卒業したから、“ストレッチ”は勉強して知っているよな?」と言われ、練習に導入した。東京でも、まだそんな認識のレベルだったのだ。では、ストレッチが伝来する前の日本では、どうしていたか? 運動前には「準備体操」、運動後には「整理体操」が存在していた。