腸内細菌が認知症に関連している可能性示す研究に注目

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腸内細菌バランスと認知症は関係ある?

「腸内細菌が認知症と関連している」とする知見が注目されている。

 国立長寿医療研究センター(愛知県)もの忘れセンターの佐治直樹副センター長らの研究グループは、「日本人の高齢者の腸内細菌の組成は認知症と深く関連している可能性がある」と、指摘する研究成果を国際脳卒中学会(ISC 2019、2月6~8日、米ホノルル)で発表し、「Scientific Reports」1月30日オンライン版に論文を掲載した。

 研究によれば、同センターの高齢者患者128人から採取した便検体を分析した結果、認知症患者は認知症のない高齢者よりもアンモニア、インドール、フェノールなどの特定物質の濃度が高かったという。

 また、認知症患者は肉類を多く摂取する欧米人の腸に多く生息し、感染症の原因菌を排除する有益な腸内細菌のバクテロイデス属が少なく、未解明の細菌種が多く見られた。

 ヒトの腸内に存在する腸内細菌叢(マイクロバイオーム)には、600~1000兆個、1000種類、重さ約1.5kgもの腸内微生物が生息するが、最近の研究では消化を助ける以外にも、免疫の防御機構やビタミン、抗炎症性物質の生成、さらには脳神経細胞間の信号を伝達する化学物質の産生まで、幅広い身体機能に影響を与えることが明らかになってきた。

 また、腸内細菌の組成は肥満や喘息、1型糖尿病といったさまざまな疾患リスクと関連することも分かっている。

認知症と腸内細菌叢の変化のどちらが先に起こるのか

 しかし、これまでの研究は腸内細菌とこれらの疾患が直接関連することを証明するものではなく、今回の研究も例外ではないと強調する専門家もいる。

 その一人で米マウントサイナイ・アルツハイマー病研究センターのMary Sano氏は、「腸内細菌叢の変化は認知症の原因ではなく、その結果である可能性も十分にある」と指摘している。

 同氏によれば、腸内細菌の組成には食事が大きく影響するが、認知症の人は食欲が減退して栄養不良になることもしばしばみられるという。

 また、米アルツハイマー病協会のKeith Fargo氏も、「腸内細菌叢と疾患との関係は最近注目を集めている研究分野であるが、腸内細菌が認知症リスクに直接影響するかどうかは不明だ」と、している。同氏は「現時点では、認知症と腸内細菌叢の変化のどちらが先に起こっているのかは分かっていない」と話している。

 最近では、慢性的な感染症と認知症との関連を調べたところ、アルツハイマー病患者の脳内に歯周病の原因菌が発見されたことが報告されている。マウスを用いた実験で、細菌が口腔内から脳内に移動し、神経細胞を攻撃している可能性が示唆されたという。また別の研究では、アルツハイマー病患者の脳内に、特定のヘルペスウイルス株が高濃度に存在することも発見されている。

 いずれの研究も、外来生物が認知症の発症に何らかの役割を担っている可能性を示唆しているが、Fargo氏は「実際のメカニズムは明らかになっていない」と述べている。Sano氏もこの意見に同意し、「歯周病菌やヘルペスウイルスはありふれたもので、保有していること自体が重要な因子とはならない」と述べ、その代わり、「組織や器官の損傷や外傷に対する身体の一般的な反応の一部が関与している可能性がある」と推測している。

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