連載「頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた」第21回

なぜ「二日酔いの頭痛」に苦しめられるのか?アルコールと頭痛の関係

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アルコール飲酒が誘因となる片頭痛や群発頭痛

 アルコールを摂取することで、もともとある片頭痛(注2)や群発頭痛を誘発してしまう方がいます。このような人は、アルコール誘発頭痛の中の即時型アルコール頭痛とも関連しており、少量のアルコールでアルコール誘発頭痛になる人もいるようです。

 群発頭痛では、飲酒により半数以上の人が群発頭痛を起こすとの報告(注3)や、アルコール飲料に含まれる物質が片頭痛を起こす場合が知られています。赤ワインはアルコール以外にもポリフェノールなどが含まれており、片頭痛の誘発・増悪因子として有名です。この原因として痛みに関連するヒスタミンや血管拡張作用のあるアルコールやポリフェノールの関与が考えられています。

●アルコールの飲酒
 【1】アルコール誘発頭痛(多くの場合、二日酔いの頭痛)   
 【2-1】アルコールとそれに含まれる物質による片頭痛
 【2-1】アルコールが契機となって起こる群発頭痛

アルコール代謝について

 アルコールは、体内の酵素「①ADH1B」と「②ALDH2」によって、分解代謝されています。酢酸は、他の十数種類の代謝酵素によって、体内で水(H20)と二酸化炭素(CO2)に分解されます。

▶︎「アルコール」―①→「アセトアルデヒド(頭痛や嘔吐の原因)」―②→「酢酸」

 この「アルコール」を「アセトアルデヒド」に分解する①ADH1Bに作用する酵素は「アルコール脱水素酵素」と呼ばれています。この酵素活性が弱いとアルコールが長時間体内に残る可能性があり、酔いの気分が残るとされています。

 「アセトアルデヒド」を「酢酸」に分解する②ALDH2の作用をする酵素は「アセトアルデヒド脱水素酵素」と呼ばれています。その活性が少ない人や活性がない人は、顔が赤くなります。②の酵素が弱いと長時間体内にアセトアルデヒドが残り、嘔吐作用や頭痛、二日酔いになると考えらます。特に②の酵素活性のない人は「下戸」と呼ばれ、アルコール飲酒には注意が必要です。この人が無理をして、お酒の一気飲みなどをすると、急性アルコール中毒となり、アルコールの量によっては命を落とすこともあります。

アルコール誘発頭痛の治療

 まずは、自分のお酒の適量を知ることが重要です。特に年末は、忘年会など飲酒の機会が多くなるので、食事といっしょに、ゆっくりと自分のペースで飲酒する事が大事です。あくまで忘年会は親睦の機会ですので、飲み過ぎて周囲の人の迷惑になることは避けたいものです。薬物治療では、アルコール代謝経路の活性化の報告(注3)(注4)や脳の浮腫をとる作用ある漢方薬の「五苓散」が良いとの報告(注5)があります。

 いくらお酒が好きでも、頭痛を起こしてしまうほどアルコールを飲酒することは身体に有害です。毎年のように大学生など若い人が一気飲みなどの無理な飲み方をして悲劇が起こっています。楽しい忘年会が悲劇にならないように、日頃から自分のアルコールの適量を意識して、楽しいお酒を心がけてもらえると幸いです。

参考文献
注1)「国際頭痛分第3版」医学書院/2015/p101-p102
注2)「慢性頭痛の診療ガイドライン」2013/p97−99
注3)Imai N, et al. Cephalalgia. 2011 Apr;31(5):628-33.
注4)Nakano T, et al. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2017. pii: S1052-3057(17)30561-X.
注5)堀江 一郎ら「和漢医薬学会学術大会要旨集」33回 p79(2016.08)

連載「頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた」バックナンバー

西郷和真(さいごう・かずまさ)

近畿大学理工学部生命科学科ゲノム情報神経学准教授、近畿大学医学部附属病院神経内科。1992年、近畿大学医学部卒業。近畿大学附属病院、国立呉病院(現国立呉医療センター)、国立精神神経センター神経研究所、米国ユタ大学博士研究員(臨床遺伝学を研究)、ハワードヒューズ医学財団リサーチアソシエイトなどを経て、2003年より近畿大学神経内科学講師および大学院総合理工学研究科講師(兼任)。2015年より現職。東日本大震災後には、東北大学地域支援部門・非常勤講師として公立南三陸診療所での震災支援勤務も経験、2014年より現職。日本認知症学会(専門医、指導医)、日本人類遺伝学会(臨床遺伝専門医、指導医)、日本神経学会(神経内科専門医、指導医)、日本頭痛学会(頭痛専門医、指導医、評議員)、日本抗加齢学会(抗加齢専門医)など幅広く活躍する。

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