片頭痛は「青色」の光で悪化し、「緑色」の光で苦痛から開放される!?

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片頭痛に悩む人は世界人口の15%弱も(shutterstock.com)

 片頭痛の症状を緩和する治療法に、文字通り「光」が見えた――。

 米ボストンの研究で、片頭痛患者69人にさまざまな色の光を当てた結果、「青色」の光では頭痛が悪化したのに対し、狭スペクトルの弱い「緑色」の光を当てると光過敏性が有意に軽減することがわかったのだ。一部の症例では、この緑色の光により片頭痛の痛みも約20%軽減することが明らかにされた。

 研究グループによると、片頭痛に悩む人は世界人口の15%弱を占め、症状として羞明(しゅうめい)と呼ばれる光に対する過敏性がみられることが多い。

 研究著者である米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのRami Burstein氏は、「羞明は痛みそのものに比べれば身体機能への影響は少ないが、光に耐えられないことで生活に支障が出ることがある。片頭痛発作の80%以上は光過敏性に関連して悪化するため、患者の多くは暗所を求めて、仕事、家族、日常生活から離れることになる」と説明している。

緑色の光以外を遮断できるサングラスの開発に

 2人の専門家が今回の治療法の特徴についてコメントしている。

 米ノースウェル・ヘルス頭痛センター(ニューヨーク州グレートネック)のNoah Rosen氏は、「Burstein氏の研究は、新たに有益な治療への道を開く可能性があり、さらに研究を進める必要があることを示唆するものだ。光療法は一部の皮膚疾患や季節性情動障害(SAD)などの疾患には既に使用され、成功している」と話す。光療法はこのほかにも一部の睡眠障害やうつ病に有効とされる治療法で、患者に高照度の光を浴びてもらうものである。

 また、米レノックス・ヒル病院(ニューヨーク市)の神経内科医Gayatri Devi氏によると、「一部の患者に光療法が奏効したことから、視床(眼などの感覚器官と脳の大脳皮質などの間に存在する脳の中継局)が片頭痛に関連する羞明を増幅する領域であることが示される」という。

 Burstein氏は現在、狭帯域の緑色の光を低強度で発光する低価格の電球や、緑色の光以外を遮断できるサングラスの開発に取り組んでいる。Rosen氏は、今後も研究を重ねる必要があると強調し、「この治療法はほぼ安全だと思われるが、費用や利便性の問題、さらに定期的な使用により症状を緩和できるのかという疑問がある」と述べている。この知見は「Brain」に5月17日オンライン掲載された。

西郷和真(さいごう・かずまさ)

近畿大学理工学部生命科学科ゲノム情報神経学准教授、近畿大学医学部附属病院神経内科。1992年、近畿大学医学部卒業。近畿大学附属病院、国立呉病院(現国立呉医療センター)、国立精神神経センター神経研究所、米国ユタ大学博士研究員(臨床遺伝学を研究)、ハワードヒューズ医学財団リサーチアソシエイトなどを経て、2003年より近畿大学神経内科学講師および大学院総合理工学研究科講師(兼任)。2015年より現職。東日本大震災後には、東北大学地域支援部門・非常勤講師として公立南三陸診療所での震災支援勤務も経験、2014年より現職。日本認知症学会(専門医、指導医)、日本人類遺伝学会(臨床遺伝専門医、指導医)、日本神経学会(神経内科専門医、指導医)、日本頭痛学会(頭痛専門医、指導医、評議員)、日本抗加齢学会(抗加齢専門医)など幅広く活躍する。

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