テオフィリンは量服用で重篤な急性中毒症を誘発しやすい
成人気管支喘息患者における通常のテオフィリンの薬用量は、400mg/日である。至適血中濃度は10~20μg/mlときわめて狭い。
中毒発現濃度は20μg/ml以上で、嘔気、嘔吐、頭痛、下痢、動悸、気分不快などの症状が数時間後には発現する。重症中毒濃度は80~100μg/mlで、血圧低下、けいれん、重篤な不整脈が出現し、諸外国での報告によると、60μg/ml以上での死亡例も存在するとのことであった。私が経験した上記症例では、病院搬送時に200μg/ml前後と異常高値を呈していたため、生命の危険が極めて大きかったものと思われる。
テオフィリンは叙放剤であるため、常用量を服用しても血中濃度は、比較的、長時間維持される(半減期は3~20時間)。大量服用例では、私が経験した症例の如く、9時間後にも異常高値を持続しやすい。
本中毒が疑われたケースでは、早期に血中濃度を測定し、直接血液灌流を開始する必要がある。濃度測定や血液灌流治療が不可能な施設に搬送されたケースでは、できるだけ早期に実施可能な医療施設に転送すべきである。
本症例の如く患者が、処方されたテオフィリンをため込んで、一度に大量服用するケースは、精神科疾患を合併している症例で多く認められる。このような不幸な結果を招くのを避けるためにも、可能な限り本人以外の服薬管理者の存在が必要であろう。