喘息と診断されている成人の多くが、実際は呼吸器疾患ではないことが、新たな研究で示唆された。診断を受けた人のうち3分の1は客観的検査で喘息が認められなかったが、80%は喘息薬を使用しており、35%は毎日服薬していることがわかった。費用や副作用を考えると、この知見は憂慮すべきものだと専門家らは述べている。
研究を率いたカナダ、オタワ病院のShawn Aaron氏によると、診断時には明らかに喘息であったが後に寛解した症例も一部にみられたが、多くは誤診であったのか寛解したのか判断できなかったという。客観的な検査を受けていない患者が多く、ほぼ半数が症状と医師の診察だけで診断を受けていた。
喘息の診断には通常、肺活量計が用いられる。プライマリケア医の多くがこの検査を省いている理由は不明だが、技術や時間がないと考える医師もいるのではないかと、Aaron氏は推測している。
3カ月間コントロールできていれば治療の強度を弱めるべき
米国肺協会(ALA)のBrian Christman氏は、「この研究は喘息の過剰診断の可能性と、入念な肺機能検査の重要性を再確認させるものである」と述べ、診断後も定期的に治療を見直す必要があると付け加えている。実際、ガイドラインでは症状を3カ月間コントロールできていれば治療の強度を減弱することを勧めていると、Aaron氏は指摘する。この知見は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」1月17日号に掲載された。
今回の研究では、5年以内に喘息と診断されたカナダの成人701人の医療記録を分析するとともに、呼吸検査を実施した結果、3分の1は喘息ではないことがわかった。約29%の患者は症状が全くみられず、約3人に1人はアレルギーまたは胸焼けであることが判明。
少数の患者(2%)は、心疾患や慢性肺疾患などの深刻な疾患が喘息と誤診されていた。喘息でなかった患者の90%以上は、1年以上服薬を中止しても問題なかった。咳や喘鳴などの症状だけで喘息と診断するはできないと、Christman氏は強調している。
Aaron氏は、医師に喘息だと言われた場合は肺活量測定検査による確定を求めるよう助言している。すでに喘息の診断を受けているが誤診ではないかと考えている人や、寛解したと思われる人も同様だという。ただし必ず医師に相談し、勝手に喘息の薬を中止してはならないと同氏は述べ、「喘息をコントロールできないと死に至る危険もある」と付け加えている。