乳酸菌には花粉症の予防効果が(shutterstock.com)
アレルギー疾患の中で最も身近なものといえば、スギ花粉をはじめとした季節性アレルギー性鼻炎、いわゆる「花粉症」だろう。毎年、このシーズンになると、天気予報で天気や気温とともに「花粉情報」まで流されるのだから、いかに花粉症に悩まされている人が多いのかがわかるというものだ。
近年、アレルギー患者は年々増え続けている。なかでもスギ花粉症の有病率は、全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした調査では、1998年~2008年の10年間でおよそ10%も増加している。正確にはわからないが、この調査の結果から推定すると、日本全国でスギ花粉症に悩まされている患者はおよそ3300万人、スギ以外の花粉症も含めるとさらに多くの人が花粉症に悩まされている計算になる。
花粉症が増えている原因として、飛散する花粉数が増加していることや食生活の変化に加え、感染症の減少、腸内細菌の変化などがあげられている。そして、このような状況を打開するための体質改善に、乳酸菌の効果が大きく期待されている。乳酸菌には花粉症をはじめとしたアレルギー症状を緩和する役割も果たすからだ。
免疫グロブリンA(IgA)抗体を増やす乳酸菌
我々の体内の気道や腸管などは、異物が入らないように粘膜のバリアによって守られている。
たとえば、花粉が鼻の中に入ってきた場合、鼻の粘液でとらえられ、バリアとして重要な役割を果たしている免疫グロブリンA(IgA)抗体が包み込んで、何の症状も起こすことなく体外へ運び出してくれる。つまり、 IgA抗体とは、花粉などのアレルゲンが体内に吸収されるのを抑える働きがあり、多いほどアレルギーを起こしづらい。実際、アレルギーを起こす人には、気道や腸管に分泌される IgA抗体が少ないことが知られている。
乳酸菌は、この IgA抗体を増やす助けをする。マウスによる実験で、乳酸菌の投与により糞便中の IgA抗体が増加したこと確認されている。 IgA抗体は、アレルゲンだけに限らずウイルスや細菌に対しても働くため、乳酸菌をとることで感染症などの予防にも効果が期待される。