自然免疫システムがヒトと同じカイコで……(shutterstock.com)
カイコ(蚕)を見たことがあるだろうか? カイコガの幼虫で、白くてツルリとしたイモ虫だ。成虫になる前に口から白い糸を出して繭を作り、中でサナギになる。この繭から生糸が作られる。
東京大学大学院薬学系研究科の関水和久教授は、このカイコをあるモノの「ものさし」に使った。カイコで、乳酸菌の免疫力を計測したのである。
カイコで乳酸菌の免疫力を測る
乳酸菌とは、糖類を分解して乳酸を作り出す微生物の総称で、膨大な種類が生息している。ヨーグルトやバター、キムチなどの食品に含まれるほか、自然界にも大量に存在する。最近は、腸内などで免疫力を高める効果が注目されているが、どの菌がどれくらいの免疫力を持つのかを調べることはなかなか難しい。
関水教授が「カイコを使ったら乳酸菌の免疫力を調べられるのではないか?」とひらめいたのには理由があった。
生物の免疫システムには2種類ある。ひとつは獲得免疫といって、体に異物が入ってくるとそのたびに最適な抗体を作り出して戦う仕組みだ。それに対して、体内にもともと備わっているのが自然免疫(先天性免疫)。ウイルスや細菌、がん細胞などが侵入してくると排除する。カイコとヒトは、この自然免疫のシステムが同じなのだという。
カイコは免疫力が高まると、筋肉が収縮する。そこで、カイコにさまざまな乳酸菌を注射し、どれだけ縮むかを比べれば、それぞれの菌の免疫力を測ることができるというのである。
関水教授は、東京大学構内のあらゆるものから乳酸菌を採取して、カイコで測ってみた。土やなめくじ、ミミズ、キムチなど約1万種を計測したという。そして、とびぬけて自然免疫活性が高かったのが、キウイの表皮についていた「11/19-B1」株だった。福島県の東北協同乳業が、この「11/19-B1」株でヨーグルトを開発。現在は通信販売で購入できる。