腰痛の「常識」とは?(shutterstock.com)
今回は趣向を変えて、腰痛の現在の常識を改めて紹介する。ここで紹介されていることが自分の常識とずれていれば、この機会に是非改めることをおすすめする。
腰痛は特別なことではない
腰痛を一度以上経験したことある人は、8割以上だともいわれている。つまり、人生で一度は経験するものと捉えることができる。そして、その8割は3カ月で自然に治るといわれている。これは以前も述べているように「腰痛は風邪のように治る」ということ。そしてほんの数パーセントが慢性化してしまって苦しんでいる。つまり、腰痛を感じたとしても慌てたりせずに、専門家のアドバイスや治療を早めに受けることで高確率で改善する。これが常識だと覚えておくことが大事だ。
画像所見はあまりあてにならない
これも以前の記事で述べたが、腰痛の85%は画像では診断できない。よって画像に頼らずに、きちんと動きや痛みの種類をみて診断してくれる医療機関などを探すことが大事である。
これに関連して興味深い研究結果がある。腰痛がない人を対象に画像所見(MRI)を撮ったところ、約80%の人に何らかの椎間板の変形、約半数に椎間板が傷ついているのが見つかったという。つまり、健康な人でもMRIを取れば何らかの異常が見つかるもので、「腰痛=画像所見での異常」とはならないというわけだ。画像で何らかの問題が見つかることは、健康人でも腰痛持ちでも同じなのである。
手術が必要なケースは多くない
腰痛の原因は、骨がずれているからだとか、骨と骨の間が狭くなっているからだとか、そのような原因で起こっている可能性はかなり低い。よって、レントゲンで骨がずれているから腰が痛い、というわけではない。画像所見はあくまで重篤な腰痛や問題を除外するため、という位置づけである。たとえば、その腰痛が内臓由来や血管からきている場合は画像所見が役に立つ(2015年11月24日の記事を参照)。
よって、骨がずれているから、骨と骨の間が狭くなっているから、という理由で手術をする必要は全くない。手術が必要な場合は、はっきりとした特異的な腰痛、たとえば、足のしびれを伴う腰痛(これは神経が腰部の骨に触れたり圧迫されたりして起こる場合が多い)などのケースだ。この場合は狭窄されているところを手術によって除圧することでしびれが改善されるケースがある。しかしながら、単なる腰痛の場合は、手術をする必要はほぼないというのが現在の見解である。