連載「“国民病”腰痛の8割以上はなぜ治らないのか?」第7回

「理想的な姿勢」は存在しない~「同じ姿勢を続けること」が病気のリスクに

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スマートフォンアプリを組み合わせて高さが変わるデスク(写真はAspirus DeskのFacebookより)

 前回、腰痛と姿勢の関係、「そもそも良い姿勢とは何か」ということを説明した。今回はより具体的に、腰痛と良い姿勢の関係について考えていきたい。

 たとえば、米国整形外科学会(AAOS)では、仕事中に腰痛を感じたらオフィスの椅子や座り方に問題がないか点検するべきあり、それには次のようなアドバイスが挙げられている。

●背中を(自然な範囲で)やや反らせて座る
●腰の部分に支えがある椅子を選ぶ
●頭と肩がまっすぐになり、支えられている姿勢を保つ
●机の高さを調整し、身体を傾けなくても手が届くようにする
●1時間ごとに休憩をとる。立ち上がって歩き回ったり、背中を伸ばしたりする

 前回、良い姿勢とは「自分の筋肉を使って保っている姿勢」、悪い姿勢とは「自分の筋肉ではなく身体の組織の引っ張りや突っ掛かりで保たれている姿勢」と説明した。それを踏まえて考えてみると、上記の米国整形外科学会のアドバイスは理にかなっている。背中をやや反らせて座るというのは、自らの筋肉で支える姿勢だ。その他のアドバイスも基本的には「身体に負担をかけない姿勢」である。

 しかし、もっとも重要なことは、最後のアドバイス「1時間ごとに休憩を取る」だ。なぜこれが最も重要なのか?

同じ姿勢を続けることが最も悪い

 実は「理想的な姿勢」は、ないに等しい。どんな理想的な姿勢でも、同じ姿勢を続けることで筋肉が収縮し続け、その部分に大なり小なり負担がかかる。どんなに理想的な姿勢も、同じ姿勢を持続することで、それは「良い姿勢」ではなくなってしまうのだ。

 健康被害は腰痛だけではない。長時間、座り続けると、心臓病や糖尿病のリスクが増大されることが、すでにいくつかの研究で明らかになっている。がんの発生率にも関連があるといわれている。

 一定の間隔で姿勢を変えて体に違う刺激を与えることで、負担が軽減、またリセットされた状態になる――。これは海外ではもはや常識で、北欧では「同じ姿勢で一定時間仕事をしてはならない」という法律まである。加えて、「従業員50人以上の企業は理学療法士を雇い健康に対するアドバイスをもらうこと」という法律もある。

スマホのアプリと連動して高さが変わるデスクも登場

三木貴弘(みき・たかひろ)

理学療法士。日本で理学療法士として勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の理学療法を学ぶ。2014年に帰国。現在はクリニック(東京都)に理学療法士として勤務。一般の人に対して、正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。

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