連載「“国民病”腰痛の8割以上はなぜ治らないのか?」第6回

あなたのその姿勢が腰痛を生む~そもそも「良い姿勢」「悪い姿勢」って何?

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そもそも姿勢の「良い」「悪い」とは何なのか? (shutterstock.com)

 腰痛になった時、「姿勢が悪いからですよ」「姿勢をよくしましょう」とアドバイスを受けた人は多いのではないだろうか? 実際に腰痛と姿勢については、昔から様々な研究や検証が行われており、避けては通れない問題であることは間違いない。なぜ腰痛と姿勢が関係あるのか? そもそも、「良い姿勢」「悪い姿勢」とは何なのか? 今回は、それを解説したい。

「だらしない」「楽」な姿勢にヒントがある

 「良い姿勢」については至る所で解説されているが、大事な事はその定義である。見た目が美しいことが「良い姿勢」なのか? 楽な姿勢が「良い姿勢」なのか? そこから紐解いていきたい。

 「悪い姿勢」のイメージはどのようなものだろうか。猫背は典型的な「悪い姿勢」であると思う。足を組んで座ったりするのも、椅子に必要以上に寄りかかるのもよくないと言われる。だが、それらの姿勢をしてまうのは、その格好が楽だからでもある。

 たとえば、足を組んで椅子に座ったことのある人は多いと思うが、なぜ足を組む姿勢が楽に感じるのだろう。椅子で腰を前の方に出し、ずり落ちたような姿勢で座ったことのある人も多いだろう。それは「だらしない」が「楽」でもある。つまり、それらは「悪い姿勢」だが「楽な姿勢」というわけだ。なぜ、それが楽なのだろうか? ここに「良い」「悪い」という姿勢のヒントがある。

「楽な姿勢」を続けると「良い姿勢」を保てなくなる悪循環に

 腰痛と姿勢の関係で見ると、「良い姿勢」とは筋肉を使ってしっかりと自分で支えている姿勢のこと。一方、筋肉を使わず、靭帯や骨、その他、軟部組織の突っ掛かりで止まっているのが「悪い姿勢」である。

 猫背、足を組んで椅子に座る、椅子からずり落ちたような姿勢――、どれも自分の「姿勢筋」を使っていない。

 たえば、足を組んで椅子に座ると、骨盤がロックされる状態になるため、骨盤を安定化させる筋肉は働かなくても良い。筋肉を使っていないので、当然「楽」に感じる。しかし、筋肉の収縮で支えていないため、靭帯や骨、その他の軟部組織の突っ掛かりで止まっていることになる。そして、それは持続的に、その部分に負担をかけてしまう。じんわりと、一部分が引っ張られたり圧迫され続けている感じをイメージしてほしい。これが腰痛を引き起こす原因の一つになるのだ。

 また、姿勢筋を使わない「楽な姿勢」を続けていくと、さらに筋肉が衰えてしまう。「良い姿勢」を保つことが困難になっていくという悪循環のスパイラルに陥ってしまう。

 もう、ご理解いただけただろう。「悪い姿勢」は、筋肉を使わない“受動的な支え”によって保たれている。一方、「良い姿勢」は「自分の筋肉で支えている、“能動的な姿勢”だ。これを頭に入れておけば、「良い姿勢」「悪い姿勢」のイメージが湧いてこないだろうか。

 世のなかには、いろいろな「姿勢」が提唱されている。ところが、どの姿勢も前述した定義に当てはまるはずだ。大切なことは、なぜそれが良いのか、悪いのか、自分で姿勢を理解していることである。

 次回はそのあたりを踏まえながら、具体的に「良い姿勢」を考えていきたい。

連載「“国民病”腰痛の8割以上はなぜ治らないのか?」バックナンバー

三木貴弘(みき・たかひろ)

理学療法士。日本で数年勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の理学療法を学ぶ。2014年に帰国。現在は、医療機関(札幌市)にて理学療法士として勤務。一般の人に対して、正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。お問い合わせ、執筆依頼はcontact.mikitaka@gmail.comまで。

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