連載第5回 快楽はどこまで許されるのか? セックス依存という病

痴漢、盗撮、強姦、児童買春......犯罪にまで及んでしまう性依存症は医療で治るのか?

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 性依存症には、心理教育や認知行動療法のほか、抗うつ薬による薬物療法を併用することもある。抗うつ薬の副作用である、性欲低下、勃起・射精の減少効果を逆手に取り、それを性依存症の治療に利用するのだ。

 また、抗うつ薬の効果で、強迫的な思考が減り、性衝動の抑止につながることもある。患者が希望すれば、抗男性ホルモン療法(自費)を行う医療機関もある。

 これらの治療は一定の効果を上げるが、性犯罪者の治療に関しては、いまだ社会全体の悩みである。

 「性的欲求を完全に断つのは難しいため、治療にも知的解決能力が求められる。性犯罪の防止には、物理的、心理的な対処が不可欠」(深間内院長)

 具体的な抑止対策には、次のようなものがある。

◯痴漢の場合、出勤時の電車の乗車時間を早めたり、遠回りをして、空いた車両に乗る。
◯スマホ盗撮は、スマホに「音が鳴る鈴」などの設定をする。
◯性欲求が起こりやすい状態(飲酒、睡眠不足、精神的な疲労時など)を把握する。
◯性衝動が起きたときに、抑止力のあるもの(大切な家族の写真など)を携帯する。
◯使用するPCに、性的なWEBサイトのアクセスを制限するフィルターなどをかける。

 「性犯罪には厳しい処罰とともに、その後のフォローがなければ再発する。そして、忘れてはならないのが、性犯罪の被害者がいること。被害者は大きな心の傷を負い、被害者の親族も犯人を憎悪する。そういう感情に、加害者がいかに接近できるか。性犯罪の被害者を生み出さないことが、我々に課せられた命題でもある」(深間内院長)

 性犯罪は再犯率が高い。それを防ぐには、医療的なアプローチがますます重要となるに違いない。


連載「快楽はどこまで許されるのか? セックス依存という病」バックナンバー

里中高志(さとなか・たかし)

精神保健福祉士。フリージャーナリスト。1977年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。大正大学大学院宗教学専攻修了。精神保健福祉ジャーナリストとして『サイゾー』『新潮45』などで執筆。メンタルヘルスと宗教を得意分野とする。著書に精神障害者の就労の現状をルポした『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)がある。

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