連載第5回 快楽はどこまで許されるのか? セックス依存という病

痴漢、盗撮、強姦、児童買春......犯罪にまで及んでしまう性依存症は医療で治るのか?

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再発率が高い性犯罪には医療のアプローチが重要 shutterstock

 性依存症のなかでも、痴漢や盗撮、さらには強姦、児童買春といった犯罪まで及んでしまうのは、大部分が男性だ。性犯罪者が社会的な制裁を受けるのは当然だが、被害者も大きな苦痛を受ける。このような犯罪行為におよぶ性依存症に対して、どのような医療的治療法があるのだろうか。

 そのひとつとして、「榎本クリニック」(東京都豊島区)の取り組みを紹介する。同クリニックでは、主に性犯罪者を対象とした治療プログラム「性依存デイナイトケア」を実施している。

 「性依存症という概念自体を、これまでさまざまな議論がなされてきた。そもそも、性に関する問題を依存症と呼んでいいのか、という問題提起がなされたこともある」(同クリニックの深間内文彦院長)

 「ほかの依存症と根本的に異なるのは、男性は"性的欲求"を生まれながら皆持っていること。これがアルコールや薬物と大きく異なる点です。男性の身体は日々精子が"つくられる"から、『アルコールを断つ』のとは意味合いが違う」

 誰もが持つ欲求とはいえ、それをどう解消するか。パートナーとの一般的な性交であれば問題ないが、常に「刺激や新奇性を求めたい」となると、バランスを損なうことになる。

 榎本クリニックでは現在、性依存症の専門外来と週3回、午後7時から90分間の治療プログラムSAG(Sexual Addiction Group-meeting)を実施している。SAGでは、自らの性的問題行動を知るための認知行動療法や内省、振り返り、言語化などの心理教育プログラムを行う。

 「実際に痴漢などを犯して捕まったあと、弁護士経由で当クリニックを受診する人が多い。我々は再発防止を目指しているが、残念ながら罰金刑などが確定すると治療から離れ、時がたつと再び性犯罪に走る――。そういうドロップアウト率が高いのが現実だ」

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里中高志(さとなか・たかし)

精神保健福祉士。フリージャーナリスト。1977年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。大正大学大学院宗教学専攻修了。精神保健福祉ジャーナリストとして『サイゾー』『新潮45』などで執筆。メンタルヘルスと宗教を得意分野とする。著書に精神障害者の就労の現状をルポした『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)がある。

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