漢方薬は更年期障害にも有効(shutterstock.com)
更年期は多彩な疾患に見舞われる。症状が似ているために女性ホルモンの減少が原因だと間違われやすい疾患も少なくない。このため、この時期にふりかかる心身の不調の原因を1つ1つ精査し、更年期障害と症状が似ている他の疾患の可能性を除外し、生活環境や生活習慣の改善をはかっても症状が改善されない場合には、更年期障害の治療を行なう。
ホルモン補充療法以外にも効果的な治療方法がある
更年期障害の治療というと、ホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy=HRT)を思い浮かべる人が多いが、臨床の現場ではHRT以外にも様々な薬が使われている。不定愁訴の内容や程度によって多様な選択肢があるので、医師と相談しながら積極的に治療に参加してみよう。以下に、HRT以外で更年期障害の治療によく用いられる薬の解説をしておく。
●睡眠薬・抗不安薬
不眠、不安、緊張、抑うつなどの症状がみられる場合には、睡眠薬や抗不安薬を使うことがある。マイスリー、デパス、リーゼ、ソラナックスなどはよく用いられる。
なお、精神症状が強い場合、最初に心療内科を受診すると抗精神病薬や抗うつ薬を処方されることがあるが、ドグマチールのように女性ホルモンを攪乱して、月経を止めてしまう作用をもつ薬があるので注意が必要だ。また、長期に服用すると依存性が生じることにも留意しなければならない。
●自律神経調節薬・循環系作用薬
女性ホルモンの分泌が減少する時期に自律神経が乱れてくる人は非常に多い。女性ホルモンと自律神経の司令塔は、同じ脳の視床下部にあるため、女性ホルモンの分泌が不安定になると、自律神経も影響を受けるからである。
発汗、のぼせ、耳鳴り、めまい、立ちくらみ、動悸などといった、自律神経の失調症状が強い場合には、自律神経調節薬や循環系作用薬を使うことがある。グランダキシン、ハイゼット、カルナクリンなどが用いられる。
女性ホルモンであるエストロゲンは脂質代謝や血圧の調整に関与しているため、エストロゲンの分泌が減少する更年期以降の女性は、高脂血症や高血圧になりやすい。ハイゼットは脂質代謝を促してコレステロール値を低下させ、カルナクリンは末梢血管を拡張して血圧を下げる働きがあるため、これらの薬を症状に応じて使い分ければ一石二鳥である。