呼気に含まれる二酸化炭素
蚊は二酸化炭素の密度を感知する。「二酸化炭素を吐く=哺乳類」という図式があるからだ。運動直後の粗い呼吸に蚊は寄ってくる。妊娠後期の女性は、通常より21%多く息を吐くので注意が必要だ。
体温・湿度
大人より子どもは蚊に刺されやすい。体温が高く、汗をかきやすいせいだ。蚊は、「温度と湿度が高い=生き物がいる可能性がある」と判断する。飲酒した人、汗かきの人などは、蚊を引き寄せやすい。
汗の臭いや体臭
筋肉で糖が変化した「L-乳酸」という物質の匂いが発汗とともに皮膚に出て、これが蚊を誘引する。また、オランダの科学者バート・クルノス氏の発表では、蚊の75%がL-乳酸の匂いにつられてヒトの足を目指すという。過去には、タンザニアで人工的に人間の足の匂いを精製し、蚊を引き寄せて駆除する研究も行われた。
黒っぽい服装、日焼けした肌
ヒトが光の3原色(赤・青・黄)を見分けるのに対し、蚊に限らず複眼をもつ昆虫は紫外線、青、緑を感知する。黒っぽい色は紫外線を吸収するため、蚊に認知されやすい。
そのほか、今年4月に発表された研究では、遺伝子が関係している可能性もある。
*「蚊に刺されやすい人は遺伝で決まっている!?」http://healthpress.jp/2015/06/post-1798.html
こうしたさまざまな手段があるとなると、単なる虫よけスプレーや殺虫剤などでは追いつかないのかもしれない。いっそ蚊がいなくなってしまえば感染症などの心配もなくなる。そんな動機から、蚊の遺伝子を組み換えて生息数を減らす研究が今も続けられている。
*「デング熱対策 遺伝子操作でヒトを刺す蚊」http://healthpress.jp/2014/09/post-25.html
人の役に立つこともある!?
人にとって「害虫」として嫌われている蚊。だが、意外なところで貢献していることもある。
蚊に刺されても痛みを感じないのは、"針"にある。これをヒントに、関西大学システム理工学部・青柳誠司教授は、蚊の針を模倣した無痛針を開発した。蚊の"針"は実は1本ではなく複数ある。血を吸う上唇1本と、その両脇にある小顎2本を連動させ、1秒間に2~3回の速さでこの3本を抜き差しし、最小限の穴を掘り進める。小顎はノコギリのようにギザギザなので皮膚との接点が少なく、痛みを軽減する。
青柳教授はこの仕組みを解明し、無痛針「ランセット針」を開発。この針を使った「ピンニックスライト」は、毎日採血が必要な糖尿病患者に使用されている。人間の健康を支える医療分野に、思わぬ"蚊の恩返し"があった。
(文=編集部)