アヴリル・ラヴィーンが「ライム病」で瀕死の重傷?日本は致死率3割の「SFTS」の季節に!

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致死率3割のウイルスを媒介!

 「死ぬかと思った......」ロック歌手のアヴリル・ラヴィーンが先月、雑誌『ピープル』のインタビューで「ライム病」に感染して5カ月間寝たきり状態だったことを告白した。

 ライム病は、マダニの一種のシカダニを媒介して「ボレリア・ブルグドルフェリイ」という細菌が起す感染症だ。米コネチカット州の"ライム"で最初に流行したためこの名がついた。

 感染したマダニに咬まれると、数日後に咬まれたところに環状の紅班ができ、次第に大きくなる。診断は典型的な症状や感染の機会があったかどうかや、血液分析で行われる。たいていは抗生物質で治癒するが、関節痛など治まらない症状もある。

 治療せずに放置すると、発熱、筋肉痛、関節の腫れなどが生じ、最終的には脳や神経の機能不全が起こって死に至ることもある。ヒトからヒトへの感染、動物からの直接感染はない。

 欧米では、年間数万人のライム病患者が発生。その報告数も年々増加しており、社会的に大きな問題となっている。

 欧米と比較すると少ないが、日本でも1986年に初のライム病患者が報告されて以来、現在までに数百人が感染している。主に本州中部より北部、特に北海道および長野県で見られる。その感染の多くは、山間地域でのアウトドア活動によるものだ。

 日本のノネズミやマダニの病原体保有率は欧米並みであるため、潜在的にライム病が蔓延している可能性が高いと推測されている。

ライム病より恐ろしい、マダニによる出血性ウイルス感染症

 昨年、エボラ出血熱が感染拡大し、アフリカ以外にも拡がる様相を見せ、世界中を震撼させたのは記憶に新しい。エボラウイルスの感染で発症し、高熱、嘔吐、下痢、腹痛と全身性の出血が特徴的な症状で、その死亡率は50~90%と非常に高い。

 このような恐ろしいウイルスは、日本にはないと多くの人は思っているが、高致死性の出血性ウイルス感染症は存在する。マダニが媒介となる「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」だ。

 2011年に新種のウイルスとして、中国を中心に流行した。人がSFTSウイルスを持っているマダニに刺咬されることで発症する。症状は発熱、出血、意識障害で、エボラ出血熱と同様に有効な治療手段はない。

 日本では2013年にSFTS 患者(2012年に死亡)が初めて確認された。国立感染症研究所によると、感染症発生動向調査で届出られたSFTS症例は110名。そのうち32名が亡くなっている。死亡率は約3割だ(2015年4月8日現在)。

 先月下旬、県内で測量実習に参加した愛媛大の学生ら11人のうち3人がダニに噛まれた可能性があり、2人が発熱などで今月病院を受診。SFTSへの感染も想定して情報収集しているという。

 流行地域は主に西日本だが、温暖化の影響もあって全国に感染者が広がっていく可能性は十分考えられる。ライム病よりも怖いのは、患者の体液や血液に触れて感染する可能性があることだ。

 日本血液学会専門医・指導医である美夏クリニック(東京都)の筑田孝司医師は、「患者の体液、血液を介して感染した症例もあり、感染者との接触に十分な防止策を取る必要がある。SFTSウイルス陽性のマダニは日本全土に分布しているので、野山や行楽などでは注意したほうがいい。不運にもマダニに刺咬されたら、医療機関を受診してもらいたい」と注意を喚起している。

一番の予防はダニを避けて噛まれないこと

 ライム病やSFTSに対する一番の予防は、マダニに噛まれないことだ。具体的には、樹木が多い場所を歩くときには、道を外れて茂みの中に踏みこんだり、地面や岩壁に直接座ったりしないようにして、ダニが体につくのを防ぐ。

 また、ダニがついてもすぐに見つけることができように、黒などの濃い色の服を避け、薄い色の服を着る。長袖・長ズボンを着用し、肌の露出を少なくする。肌や衣服に虫よけスプレーをしておくことも効果的だ。

 ダニに触れた可能性がある場合は、その時点で全身をチェックする必要がある。万一刺された場合は、自分でマダニを引きはがさず、病院の皮膚科で切除を受けるようにしよう。無理にマダニをはぎ取ると、感染が高まる危険性があるからだ。

 やむを得ず、ダニを取り除くときは、先の尖った毛抜きを使い、皮膚にできるだけ近いところでダニの頭か口を挟み、真っすぐ上に引き抜く。焦ってしまいがちだが、ダニの体の部分を引っ張ると、その体液が人体に逆流して、病原体に感染してしまう可能性があるからだ。

 マダニの活動期は春から初夏、そして秋。これから野山に出かけることが増える季節だ。たかがダニと侮らず、心に留めておいてもらいたい。
(文=編集部)

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