連載・知られざる漢方薬パワーの実像①

前年の5倍ペースで患者急増!今年のインフルエンザ対策は漢方薬に注目

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インフルエンザのときこそ漢方の出番

「インフルエンザに漢方」と言われてもピンと来ない方も多いのではないかと思います。でも、実はインフルエンザに対する効果は漢方薬の深く長い歴史の中で証明されています。

 臨床の現場でもインフルエンザの症状緩和のために漢方薬を処方する医師は増えてきています。抗インフルエンザウイルス薬と違って症状に対して速やかにアプローチできるところが漢方薬を利用するメリットです。西洋医学的な標準治療に加えて漢方薬の併用も考慮することでお互いを補完する治療が可能となります。

 漢方は長い歴史がある経験的な医学です。東洋医学の古典である『傷寒論』に記載されている、傷寒とは今で言うところのインフルエンザ様疾患で、急性熱性疾患に該当します。傷寒論は急性の伝染病について述べた古典です。2世紀末の中国・後漢代の医師・張仲景(ちょうちゅうけい)が疫病の流行を受けて著したとされています。これほど古くからすでにインフルエンザのような伝染病が人間の生命を脅かし続けているというわけです。

 例えば、「麻黄湯」は多くの人類の命を奪った「傷寒」に適応する漢方薬として収載されています。1500年以上もの歴史と経験の中で有効性が実証されているので、新薬とは全く違った背景があることが特徴です。漢方には部分をターゲットとする合成物とは異なり、自然由来の天然物を利用して、体全体のバランスを正常に整える効果があります。

抗インフルエンザウイルス薬にも劣らない「麻黄湯」

「麻黄湯」は西洋薬の抗ウイルス薬と異なるメカニズムで、インフルエンザの症状を緩和します。漢方薬は効果が遅いというイメージがあるかもしれませんが、非常に即効性にも優れています。体温を上昇させてウイルス活動を低下させ、免疫応答を活発にさせ、結果的に発汗とともに熱を冷まし、症状を緩和します。その効き目は抗ウイルス剤と言っても過言ではないほどで、オセルタミビルと比較した試験でも麻黄湯単独及び併用群にて同等の解熱効果が見られたとする報告があります。

 とくに発熱・筋肉痛・関節痛などのインフルエンザに特徴的な症状に対しては速やかに効果をもたらします。また、熱を下げて免疫活動を抑えてしまう恐れがある解熱鎮痛薬と比べて、風邪やインフルエンザのときこそ漢方の出番だと言えます。

 もちろん、どちらにもメリット・デメリットがあるので、ウイルス検査で陽性となれば抗ウイルス薬、インフルエンザの疑いがあるときは早めに麻黄湯を使うなど適切に使い分けられる知識を持つことが大切です。

罹ってからではなく、負けない体づくりが大事

 どんなに優れたお薬があったとしても、一度罹ってしまえば辛い思いを多少なりとも味わうことになります。罹ってから慌てるのではなく、インフルエンザに罹らないための予防に努めるようにしたいものです。そのためには、ワクチンの接種とともに日頃から免疫力・体力をつけて負けない体づくりをすることが大事です。

 その体力づくりの一つとして漢方を活用することもできます。例えば、「補中益気湯」はふだんから風邪をひきやすい方の体力増進に適しています。さらに補中益気湯にはウイルスの増殖を抑える効果があることも分かっており、インフルエンザ予防にも役立つでしょう。
(文=笹尾真波)

笹尾真波(ささお・まなみ)

一般社団法人日本薬業研修センター漢方講座執筆・編集
漢方アドバイザー養成講座アドバイザー(国際統合治療協会)
ロイヤル漢方クラブあんしん漢方認定薬剤師
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