虚弱体質やアトピーも子供のうちに「漢方薬」で治す(depositphotos.com)
「子供に薬はあまり飲ませたくないけど、漢方薬なら……」と考える保護者は多いかもしれない。また「身体が弱いから強くなってほしい」「アトピーだから体質を変えたい」など、お子さんの体質改善のために漢方を利用してみたいと考える人は多いのではないだろうか。
2017年12月15日、慶應義塾大学環境情報学部・渡辺賢治教授(漢方専門医・医学博士)を迎えて、「漢方の話~子供と未病~」というテーマで茶話会が開かれた(主催:一般財団法人子供健やか財団/会場:ネクストクリニック&ネクストステージ)。
漢方医学や漢方薬とはいったいどのようなものなのか、子供の健康を守るためにどのように漢方を使ったらいいのかなど、レクチャーの内容をレポートする。
漢方医学は「2の220乗−1」の組み合わせによるオーダーメード医学
漢方薬は、複数の生薬からできている。たとえば馴染みの深い「葛根湯」の場合、葛根(カッコン)、麻黄(マオウ)、桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)という7つの生薬が組み合わさったものだ。
現在使える生薬は、およそ220種類ある。その人の体質や症状などにより、220の生薬を組み合わせて処方するのが漢方薬だ。つまり組み合わせは「2の220乗−1」ということになる。生薬を組み合わせることで多面的な薬効が得られ、ありとあらゆる病気や症状に対処することができる。
また漢方医学では、異なる病名でも同じ薬で治療をする「異病同治」と、同じ病気をもっていても個々人の病気に対する応答は異なるという「同病異治」という考え方がある。
たとえば「異病同治」では、代表例として「八味地黄丸(ハチミジオウガン)」という薬が挙げられる。これは腎虚の薬で、生まれ持ったエネルギーが枯れてくるに従って起きてくる症状に効く。白内障や高血圧、前立腺肥大、陰萎(ED)、耳鳴、糖尿病、腰痛などだ。
反対に「同病異治」の例として、風邪では、麻黄湯や葛根湯、桂枝湯、麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)、香蘇散(コウソサン)、麦門冬湯(バクモントウトウ)などが個々人の症状に対応して用いられる。
漢方の真髄は「①病気ではなく人を診る医療」「②逃げない医療(どんな人でも。こじれていても)」「③あきらめない医療(難病の患者さんも多い)」「④寄り添う医療」とされ、「個々に合わせたオーダーメードの医学」だ。
焦点はあくまで患者であり、個人を重視する。集団で得られた知見を個人にあてはめようとする現代医学とは少し異なる。