連載「日本をリハビリテーションする」第6回:鶴巻温泉病院院長・鈴木龍太

脳出血、なぜ「冬の月曜朝」に発症多い?意識障害や言語障害、危篤状態に陥るケースも

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脳出血の約60%を占めるのが中央部で起きる被殻出血

 それでは、一番多い被殻出血についてお話ししましょう。

<被殻(ひかく)出血>
 高血圧性脳出血の中で60%以上を占め、一番頻度の高いものです。脳の中のほうにある被殻が出血すると、反対側の手足が麻痺し、感覚にも障害が出ます。出血が大きいと、意識障害が進んできます。右利きの人は言葉を理解してしゃべる機能が左の脳にあるので、左の脳出血が起こると、利き手の右手の麻痺だけでなく言語障害(失語)が起こり、しゃべれなくなることがあります。

脳出血、なぜ「冬の月曜朝」に発症多い?意識障害や言語障害、危篤状態に陥るケースもの画像2

 脳出血は発症1~6時間で出血が止まります。そのため6時間以上たっても意識障害がない例では、手術はせずにそのまま様子を見ることができます。血圧を下げる薬を使い、脳の腫れ(脳浮腫)を軽くする薬(グリセオール)を点滴します。

 被殻出血では、血腫の量が少ない場合は保存的に様子を見ます。31ml以上で意識が半昏睡状態(刺激で目は開けないが、身体を動かす)のものは、急性期の手術の適応があります。

 手術は、頭蓋骨を開ける開頭手術と、小さな穴から血腫を吸引する定位的脳内血腫除去術がありますが、2015年のガイドラインでは、意識障害がある場合は定位脳手術的血腫吸引術がよいとされています。しかし、手術適応と手術法は患者さんの年齢や合併症、家族や本人の意思などを考慮して、その場の状況で判断することになります。

 脳出血の治療で悩むのは、高齢者や非常に重症例、危篤状態のケースです。危篤状態の例は手術でしか救命できません。しかし、重症であればあるほど、術後の状態も悪く、命を救えても、遷延性意識障害といって目は開けているが外界とのコミュニケーションが取れない状態や、寝たきりの状態になることがほとんどです。ガイドラインでも、重症例の手術は勧めていません。

回復期リハビリテーション

 脳出血では、片麻痺等の脳出血特有の症状は、保存的治療でも外科的治療でも残ります。したがって、リハビリテーションがもっとも大切です。早めに回復期リハビリテーション病院(病棟)へ移る必要があります。治療した病院が救急病院だったり、大きな病院だったりすると、回復期リハ病院へ移ることをためらったりする方もいると思います。しかし、リハビリの開始が遅くなればなるほど回復が遅れ、自宅へ帰るチャンスを逃します。

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 寝たままでいると、筋肉の萎縮や、手足が硬くなってしまう拘縮が起こるので、リハビリは発症早期から必要です。被殻出血の患者さんはリハビリをすることで70%ぐらいの方が自力もしくは杖歩行が可能になります。家では歩き、外へ出るときは車椅子というレベルの人もいます。ただし、手の細かい動きはできません。
 
 リハビリは、退院して家庭に帰っても必要になりますから、入院中に家族の方も覚えておくといいでしょう。時間はかかりますが、希望を持って焦らずリハビリに取り組んで下さい。脳出血の人は一時うつ状態になって落ち込む人も見られますが、だんだん自分の現実を受け止められるようになります。家族の方も焦らずに見守っていてあげることが大切です。
(文=鈴木龍太/鶴巻温泉病院 院長)

連載「日本をリハビリテーションする」バックナンバー

鈴木龍太(すずき・りゅうた)

医療法人社団 三喜会 理事長、鶴巻温泉病院院長
「変化を進化に、進化を笑顔に」をモットーに日々の診療やリハビリテーションに注力し、高齢者医療や緩和ケアなど地域の幅広いニーズに応える病院経営に取り組む。
1977年、東京医科歯科大学医学部卒。医学博士。米国NIH留学、昭和大学藤が丘病院脳神経外科准教授、安全管理室 室長を経て、2015年より現職。
日本リハビリテーション医学会専門医・指導医、日本慢性期医療協会常任理事、日本リハビリテーション病院・施設協会理事。

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