発達障害は周囲の気づきや理解が重要(depositphotos.com)
発達障害は生まれつきの脳機能障害であり、症状は個人によって大きく変わります。しかし、各々の特性に合わせて適切な療育や訓練をすることで、その症状を改善し、社会へ適応する力を伸ばすことができます。ここで重要なポイントは、療育をより早期に(小学校入学前まで)始めるということと、家族に寄り添いながら「オーダーメイドの療育」を行うこと。
これは効果的な症状の緩和だけでなく、保護者や保育者をはじめ子どもに関わる大人達の心のケアであり、社会的受容の促進につながります。結果的に発達障害児が抱えやすい二次的な悩みや症状(他者から受け入れられないことが原因で不登校や鬱になるなど)の抑制にも繋がるのです。
現状の課題は、この効果的で重要な早期療育を受けられる機会が大変少ないことにあります。その原因として、
・保護者がそもそも子どもの発達障害に気づかない
・気づいても早期療育の必要性を感じない
・必要性を感じても時間がない
・療育事業所の数が少ない
などがあります。この現状にフォーカスしながら、「オーダーメイドの良質な早期療育」を「広める」、つまり、必要性を知ってもらう為の啓蒙活動と療育事業所増設が、発達障害における根本的な改善(症状の緩和、社会的受容)に繋がると考えられます。
小学生・中学生全体で15人に一人が発達障害
1. 発達障害児はどのくらいいる?
2012年文部科学省調べによりますと、小学生・中学生全体の約6.5%が発達障害の可能性があるとされています。約15人に一人がそれに当たると考えると決して少なくない数です。国が行う児童発達支援として開所している療育事業所は約6000カ所に及び、ここ数年で倍以上に増え、発達障害に対する認知も大分進んできました。しかし、実際に早期療育サービスを受けられている発達障害児は未だ全体の1割程度に留まっていると試算されます。
2. 発達障害児が困っていることは?
(1)集団生活
幼児期のコミュニケーション能力は、「自分しか見えない世界」から、まずは母親や家族を、そして保育者やクラスメイトなどの他者を段階的に受け入れていくという発達過程を通ります。しかし、発達障害児はこの「自分しか見えない世界」に留まっている場合が多くあります。発達障害児の年令が上がるにつれ、周りの健常な子ども達の脳発達、特に他者とのコミュニケーション能力において顕著な違いが出て来ることから、保育園などの集団生活に馴染めず、園生活を楽しむことが難しくなります。
ここで難しいのは、発達障害児の症状は身体障害に比べ周囲から見て分かりづらいことです。身体や言語の能力には問題が無い場合、周囲の大人はどうしても同年代の園児と比べて、「なぜ他の園児と馴染めないのか?」「なぜ手を出してしまうのか?」と具体的解決策がないまま困り果てるという結果に陥りやすいのです。
この問題を解決していく大前提は、「子どもの特性を知る・理解する」ということに尽きます。発達わんぱく会の行う保育所巡回事業においては、専門職が子どもたちそれぞれの行動観察を行い、その特性を見立て、具体的なアプローチの方法を保育者に伝えます。まずは大人達に発達障害を理解してもらうという取り組みです。「この年齢ならばこれくらい出来るはず」というバイアスを外していく、子どものありのままの姿を理解していく作業でもあります。
(2)感覚異常
発達障害には様々な症状がありますが、各感覚が過敏すぎること、逆に鈍感すぎることによって日常生活に不便が生じるケースがあります。
聴覚過敏によって人混みが不快、聞くべき音を拾えず人の話を聞けない、視覚過敏で情報が入りすぎ混乱する、触覚鈍麻で寒いのに服を脱いでしまい風邪をひく、身体を駆使してしまう、平衡感覚が弱く体が揺れてしまい、じっとしていられないなど、どこかの感覚に異常があることが多いのです。それぞれの子どもの特性を観察し、不快や不安を無くす環境作りをすることが必要となります。