生きづらい世の中...... それってもしかして発達障害のせい?

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発達障害の関連遺伝子が特定されたが......

 大人の発達障害が注目されている。「何だかいつもうまくいかない」「どうしても仕事ができない」――。

 そんな悩みを抱え、もしかしたら「自分は発達障害かも」と専門医を訪れる大人が急増している。成人の発達障害の診断ができる医療機関は全国的に少ないため、どこも予約でいっぱいだ。

 しかし、どうも最近の傾向は"発達障害"という名称が独り歩きしているようだ。何かが「発達」していない「未熟」という印象を与える、便利な言葉になっている面もあるようだ。「うまくいかない」「できない」、あるいは「生きづらさ」の原因を発達障害に求める風潮がある。

 ただし、発達障害は医師の診察を受けて、すぐに「あなたは発達障害です」と確定されるものではない。CTやMRIのような画像診断検査や、能力検査の数値で判明するわけではないからだ。

 発達障害はいくつかのタイプに分類されており、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害、チック障害などが含まれる。発達障害は脳機能の障害なのだが、身体障害や知的障害に比べて周囲にはわかりにくい。

診断が「生きづらさ」解消にすぐに結びつくわけではない

 人は誰にでも得手、不得手があり、それぞれに個性がある。バランスのいい人ばかりではなく、偏りのある人も大勢いる。そのような特性が、主に経験や性格によるとすれば、それは個性といえるだろう。そうではなく、抗えない脳機能の問題であれば、発達障害の可能性がある。ほかにも、知的能力がやや劣る「境界領域知能」や精神的な疾患が「生きづらさ」の原因となる場合もある。その見極めには時間がかかるのだ。

 発達障害の特徴といえる自閉傾向や過敏性が強ければ、子どもの時に「お友だちが少ない」「落ち着きがない」「いつも騒ぎを起こす」といった行動障害に現れやすい。早い段階から「この子には障害がある」と認識される。

 だが、症状がそれほど強くないとか、あまり目立たない場合は見過ごされる。自他ともに「ちょっと変わっている人」と思われるかもしれないが、学生時代はけっこう自己流のライフスタイルでやり過ごせるものだ。だが、発達障害を抱える人は、社会人となって社会規範や暗黙のルールといった壁にぶつかると、ひっかかり、行きづまり、悩んでしまう。
 
 そして、病院の門をくぐり、発達障害という診断を下される大人は少なくない。 「これまでの辛さは、全て障害のせいだったんだ」と納得したり、原因がわかって気持ちが軽くなるという声は多い。当事者にとって、確定診断による自責からの解放は、とても大きな成果だ。

 しかし、それが「生きづらさ」の解消には、すぐに結びつくわけではない。 障害特性の多様性や個別性の高さによって、臨床現場でも福祉の支援現場でも理解や対応は一貫されていない。生活支援も就労支援も、関係者は手探り状態だといえる。
 
 発達障害の本格研究も、近年始まったばかりだ。2014年12月、英国健康保険と英遺伝子研究機関ウェルカム・トラスト・サンガー研究所が協働して行っている「発達障害解読」(DDD)プロジェクトが、発達障害の関連遺伝子12個の特定に成功したとの研究論文を英科学誌『ネイチャー』に発表した。遺伝子研究が発達障害の確定診断に役立つ日は、そう遠くはないかもしれない。
(文=編集部)