連載「日本をリハビリテーションする」第5回:鶴巻温泉病院院長・鈴木龍太

脳ドックで脳動脈瘤が見つかったらどうする 手術か経過観察かどちらが正しい?

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脳ドックで未破裂脳動脈瘤が見つかっても不安をつのらせてはいけない

 さて困りました。考えている間にも動脈瘤が破裂するかもしれません。不安で眠れないかもしれません。誰に相談していいかも迷います。ドックで診てもらった先生は、有名な別の脳外科の先生を紹介してくれるだろうかと思います。

 脳ドックを受けたために、知らなかった脳動脈瘤があることがわかり、今まで気にせずに生活してきたのに、何をするにも心配になり、人生が真っ暗になってしまったという話もあります。

 脳ドックガイドライン2014でも以下のような記載があります。

 「MRIなどで発見された無症候性脳病変を、脳ドック受診者に説明する場合には十分な注意が必要である。説明する側は、たいしたことはないと思っていても、説明を受ける側は想像以上に深刻に受け止める場合があり、今後の生活によけいなストレスを与えてしまう場合がある。(中略)いたずらに不安感をつのらせるだけにならないように注意する」

 「未破裂脳動脈瘤診断により患者がうつ症状・不安を来たすことがあるため、インフォームドコンセントに際してはこの点への配慮が重要である。うつ症状や不安が強度の場合はカウンセリングを推奨する。患者および医師のリスクコミュニケーションがうまく構築できない場合、他医師または他施設によるセカンドオピニオンが推奨される。未破裂脳動脈瘤の自然経過や治療適応、治療法の選択については未だ確定できないものも多く、患者は医師から伝えられた情報を正確に理解することが容易ではない。破裂リスク、治療のリスクは患者には非常に高く捉えられる傾向があり、未破裂脳動脈瘤が診断されることにより不安が高まるという報告がある」

未破裂脳動脈瘤が見つかったときの対応を決めてから脳ドッグを受けること

 このように脳ドックを受けて、未破裂脳動脈以外でも、無症候性脳血管病変が発見されたり、認知症の可能性が指摘されたりすることで、その人のQOLが低下してしまうことがあります。

 私は「脳ドックを受ける場合は、脳ドックでわかることをよく勉強して、もし何かわかったらどうしようと、ある程度、決めてからドックを受けましょう」と伝えています。

 例えば、未破裂脳動脈瘤が見つかったらすぐに治療を受けようとか、破裂の確率が低ければ10年間は様子を見ようとか、おおよそのことを考えておくといいと思います。それでも様子を見ていて、だんだん不安になる人もいますから、なかなか難しい判断になります。

 近親者がくも膜下出血で亡くなったという理由で脳ドックを受けた方は、受ける前から「脳動脈瘤が見つかったら治療を受けよう」と決めていることが多いと思います。そのような決意を持って脳ドックを受けると、迷うことが少ないと思います。

 ただし、10mmより大きい脳動脈瘤はかなりの確率で破裂しますから(UCAS Japan NEJM 2012 366:2474-2482)、迷わず治療することをお勧めします。
(文=鈴木龍太)

連載「日本をリハビリテーションする」バックナンバー

鈴木龍太(すずき・りゅうた)

医療法人社団 三喜会 理事長、鶴巻温泉病院院長
「変化を進化に、進化を笑顔に」をモットーに日々の診療やリハビリテーションに注力し、高齢者医療や緩和ケアなど地域の幅広いニーズに応える病院経営に取り組む。
1977年、東京医科歯科大学医学部卒。医学博士。米国NIH留学、昭和大学藤が丘病院脳神経外科准教授、安全管理室 室長を経て、2015年より現職。
日本リハビリテーション医学会専門医・指導医、日本慢性期医療協会常任理事、日本リハビリテーション病院・施設協会理事。

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