ギャンブル依存の父を描く、大月悠祐子『ど根性ガエルの娘』1〜4巻(白泉社)
今年6月19日、衆院本会議で「カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案」が、自民、公明、日本維新の会などの賛成多数で可決。参院に送られた。
国会は7月22日まで32日間、会期を延長することが決定され、カジノ実施法案はこの会期内に成立する見込みとなっているが、野党は依然として反発を強めている。
この法案で特に問題となっているのが、「カジノ事業者が利用者に賭け金を貸す制度」が盛り込まれている点だ。「特定金融業務」と呼ばれているこの制度は、一定の頭金をカジノに預け、審査が通れば、多額のギャンブル資金を、2ヶ月間は利息なしで借りられるという、とんでもない制度だ。
依存者はお金を借りてまで負けを取り返そうとする
第三者による貸し付けを防ぐために、官僚が考えたシステムだというが、ギャンブルに熱中している人にお金を貸すという制度は、危険きわまりない。しかも、6月16日の朝日新聞によれば、このカジノでの借金は、借り入れを年収の3分の1までに制限する貸金業法の「総量規制」も適用されないという。
負けが込めば込むほど異常な精神状態に陥り、お金を借り手でも取り返そうとするのが、ギャンブラーの習性だ。そんなギャンブル依存者に金を貸し付ける制度まで用意して、その人の人生を破綻させることへの責任は、いったい誰が取るのか。
マカオのカジノでギャンブルをするためにファミリー企業から総額106億円を借り、特別背任容疑で有罪判決を受けた、大王製紙の井川意高・前会長も、マカオのカジノで負けた時に、ジャンケットと呼ばれる人たちから金を借りていた。数千万円、1億円という額を、利子なしで借りることができたと、井川氏は著書『溶ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』(幻冬舎文庫)の中で書いている。
その井川氏が、ダイヤモンドオンライン(2018年4月10日付)に掲載されたインタビューで、今回のカジノ法案の賭け金貸し付け制度について、こんなふうに語っている。
「カジノで地獄を見るのは、負けたときに現地でお金を借りるからなのです。/カジノを含む統合型リゾート施設(IR)実施法案の議論が進んでいますが、官僚も議員もカジノで遊んだことのない人が議論しているのは問題です」
「カジノ狂いになった人間からすれば、数千円の入場料はどうかと思います。カジノに足を踏み入れた時点で入場料分の負けが発生しているわけですから、それを取り返そうと熱くなってしまう」(編集部註:原文から改行を省略)
ギャンブルで100億以上もの借金を作った人物の話だけに、説得力がある。経済効果ばかりを口にする官僚や議員たちは、どれだけギャンブルの恐ろしさを分かっているのだろうか。