ゴリ押しカジノ法案への警告に? 『ど根性ガエルの娘』が描くギャンブル依存の父

この記事のキーワード : 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

『ど根性ガエルの娘』ギャンブル依存の父を持つ家族の物語

 ギャンブル依存の恐ろしさを描いた小説や映画は、古今東西、枚挙にいとまがない。今回はそんな中から、ひとつの漫画作品を紹介しよう。漫画家・吉沢やすみの娘である大月悠祐子による漫画『ど根性ガエルの娘』である。

 『ど根性ガエル』という大ヒット作の作者である作者の父・吉沢やすみは、1982年、連載3本と読み切り10本の依頼を抱えながら、プレッシャーに心を壊し、突然失踪する。

 その間、吉沢は、所持金3万円を元手にギャンブルをして渡り歩いたが、最初は勝って勝ちまくったという。しかしそのお金もいずれはつき、街を放浪する生活に。音信不通となった家族のもとに戻ったのは、数ヶ月後のことだった。

 家庭に戻ってきてからも、吉沢は「ギャンブル依存症の父」そのものである。漫画家としての仕事はほとんどなくなり、時には清掃やガードマンの仕事をしていた。

 しかし『ど根性ガエル』のキャラクターがCMになってお金が入ったりすると、またすぐにギャンブルにつぎこんで、仕事もやめてしまうのだという。複数のカードを作って限度額いっぱいまでお金を借り、結局、妻がその借金を肩代わりしたこともあった。

ギャンブル依存の父の赤裸々な姿と深刻な葛藤

 『ど根性ガエルの娘』は、まだ1巻までは「家族の再生の物語」という美談風にまとめられていた。しかし、2巻以降は「家族で起こっていたことを正直に描きたい」という作者の思いから、さらにディープな「家族の愛憎の物語」となっている。

 いい話に収めたい版元との意見の相違もあったようで、現在は当初刊行されていたのとは別の出版社より刊行されている。

 この漫画は、子どもの財布からもお金を盗むという、ギャンブル依存の父を持った家族の地獄絵図の物語であると同時に、それでも家族であることをやめなかった愛の物語としての側面も持っている。

 自分と同じ漫画家という道を選んだ娘に対し、「自分のことを好きに描いていい」という吉沢は、孫と遊び、家族のためにカレーを作る人間味あふれる父親だ。

 しかし結局、吉沢はその後もついに雀荘通いをやめることはなく、2016年、雀荘で牌を持ったまま脳卒中で倒れ、緊急入院する――。

 いまは懸命のリハビリ中であることが『ど根性ガエルの娘』にも描かれているが、娘の大月悠祐子は、そんな父の赤裸々な姿とともに、父娘の長年の深刻な葛藤も描き続けていくようだ。

 さて、いま国会で審議されているカジノ法案――。入場料6000円や入場は1週間に3回までといった規制を設けるとうたっているが、ギャンブル資金の公的貸し付け制度まで用意するのだから、依存症の火に油を注ぐことは明白だ。これ以上不幸な家庭を増やさないためにも、いまからでも真剣に法案の是非を考え直すべきである。
(文=里中高志)

里中高志(さとなか・たかし)

精神保健福祉士。フリージャーナリスト。1977年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。大正大学大学院宗教学専攻修了。精神保健福祉ジャーナリストとして『サイゾー』『新潮45』などで執筆。メンタルヘルスと宗教を得意分野とする。著書に精神障害者の就労の現状をルポした『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)がある。

里中高志の記事一覧

里中高志
難治性むちうち症からなぜ多くの不定愁訴がおきてしまうのか?
難治性のむちうち症を改善 後編 東京脳神経センター 整形外科・脊椎外科部長 川口浩医師

前編『画像診断できない難治性のむちうち症を独自の治療法で改善』

原因不明で治療法がなく多くの患者さんが回復をあきらめていた難治性のむちうち症。東京脳神経センターで進む独自の治療で、めまい、動機、吐き気などの全身症状やうつ症状などの不定愁訴が大幅に改善しているという。その具体的な成果についてお話を伺った。

nobiletin_amino_plus_bannar_300.jpg
Doctors marche アンダカシー
Doctors marche

医療法人社団 顕歯会 デンタルみつはし 理事長…

三橋純

近畿大学理工学部生命科学科ゲノム情報神経学准教授…

西郷和真

小笠原記念札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認定クリ…

横山隆