連載「肥満解読~痩せられないループから抜け出す正しい方法」第13回

2型糖尿病でも糖質をどうしても食べたい人は「食べ順」食事療法でダイエットを

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三角食べは成長期の子供向けの食べ方

 「食べ順」による食後高血糖の予防について、糖尿病の患者さんに説明すると、次のように言われます。

 「主食とおかずと汁ものや牛乳を、順繰りにあるいは交互に食べるのが体にいいと小学校の給食で習いました。それからずっとそれでやってるんですが、先生はあの食べ方を否定されるんですか? 学校の先生や栄養士さんから指導されたのに」

 ……はい、否定します。「大人」で「糖尿病」のあなたには、三角食べは向いていません。三角食べというのは、成長期の子供が偏食して栄養バランスを崩さないように考えだされた食べ方です。

 あのようにいろんな食材をちょっとずつ食べる食べ方をしておけば、少食の子供が途中で給食を残しても、いろんな食材を食べることができますよね。成長期の子供の偏食の弊害を避けるための食べ方なのです。大人で2型糖尿病やその予備群のあなたが、わざわざする必要はありません。

 実は三角食べで血糖値がどのように変化するのかについても、今井佐恵子教授は検討されています。上に紹介した「参考2」の「図3」の青い線の一部が「三角食べ」ですが、ご飯から食べるよりはましなものの、食後高血糖になることは免れようがありません。生活習慣病の大人は、三角食べは避けてください。

おかずは魚がいいのか、肉がいいのか?

 さて、食べる順番はわかったとして、順番さえ守ればおかずは何でもいいのでしょうか? これについては関西電力医学研究所の矢部大介医師たちが面白い研究を発表されています。

○参考3:糖尿病ネットワーク(2016年01月08日)「食べる順番」ダイエットで食後高血糖を防止 米より前に野菜・魚・肉(http://www.dm-net.co.jp/calendar/2016/024617.php)

 矢部先生たちは「①ご飯を食べて魚を食べる」「②魚を食べてご飯を食べる」「③肉を食べてご飯を食べる」という3つの食べ方で、食後血糖値の変化や、インクレチンというインスリンを分泌するホルモンの発現変化を、2型糖尿病の患者さんと健康な人とで研究されています。

 結果は、ご飯から先に食べると食後高血糖になるけれども、ご飯の前に魚あるいは肉を食べると、どちらでも高血糖がある程度抑えられるというものでした。野菜を食べなくても、肉あるいは魚料理を先に食べてから糖質を食べれば食後高血糖がある程度抑えられるのです。

 わずかですが、肉をご飯より先に食べた方が魚をご飯より先に食べるよりも血糖値の上昇を抑える効果は高くなりました。しかしまた同時に、脂肪を蓄積しやすくなるインクレチン(GIP)の分泌も亢進するので、矢部先生たちは肉を食べることは肥満につながるのではないかと考察されています。

 以上のことからも、「野菜」だけでなく「おかず」を先に食べてから「糖質(主食)」を、という食べ順に食後高血糖を抑える効果が高いことがよくわかります。

糖質制限ダイエットと食べ順ダイエット、どちらがいいか?

 さて、ここまで書いてくると「え? じゃあ、糖質制限しなくても食べ順を守るだけで2型糖尿病の食事は大丈夫なの?」という疑問がわいてくると思います。

 結論から言うと、まったく同じ程度の効果は期待できません。

 実践、継続できる人には糖質制限をお勧めします。糖尿病が改善するスピードも速いです。でも、「私はどうしてもご飯を食べたいんです!」「パンを食べない人生なんて考えられません!」「スイーツのない人生なんてクリープのないコーヒーみたいなもの!」という方々には、食べ順ダイエットをお勧めしておきます。

 糖質制限だけが食事療法の唯一の選択肢ではありません。ともかく、最初から薬で病気を治すことを考えるのではなくて、食事を改善して病気を治すこと、そこにみなさんもっと注目してください。

連載「肥満解読~痩せられないループから抜け出す正しい方法」バックナンバー

吉田尚弘(よしだ・ひさひろ)

神戸市垂水区 名谷病院 内科勤務。1987年 産業医科大学卒業、熊本大学産婦人科に入局、産婦人科専門医取得後、基礎医学研究に転身。京都大学医学研究科助手、岐阜大学医学研究科助教授後、2004年より理化学研究所RCAIチームリーダーとして疾患モデルマウスの開発と解析に取り組む。その成果としての<アトピー性皮膚炎モデルの原因遺伝子の解明>は有名。
その傍らで2012年より生活習慣病と糖質制限について興味を持ち、実践記をブログ「低糖質ダイエットは危険なのか?中年おやじドクターの実践検証結果報告」を公開、ドクターカルピンチョの名前で知られる。2016年4月より内科臨床医。

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