糖質制限に「鉄分」と「たんぱく質」は重要(depositphotos.com)
糖質制限では、ご飯、パン、麺、芋、スイーツ、清涼飲料水を基本的に食べません。ですが、それらで減った分のカロリーをたんぱく質と脂質で補います、つまり肉、魚、豆腐や乳製品、卵などの摂取量が増えます(もちろん、葉っぱ野菜はしっかり食べてくださいね)。
また、アルコールも糖質を含まない蒸留酒であれば問題なしなので、ハイボールや焼酎のお湯割り、オンザロックなどを楽しむことができます。このために糖質制限では、食に関する満足感が損なわれない人が多いのです。特にお酒が好きな男性では、食べてもいい食材がそのまま酒のつまみに最適なのでうれしい食事制限ですよね、酒好きの中年男性の成功率が高いのもよくわかります。
ところが、女性の場合はうまくいかないことがしばしばあります。
女性の糖質制限の失敗に良くあるパターン
女性でも、最初の2週間ぐらいは問題なく厳しい糖質制限を続けられて、体重減少も体調も好調な方が多く見られます。ところが、3週間目ぐらいから次第にあまり体調がよく無い感じになってきて、5~6週間目にはとても続けられないとギブアップ。糖質を食べるようにしたら元気が戻ってきます(何週目でそうなるかは個人差があります)。
これはどういう原因、どういった状況で起こるのでしょうか? いくつか原因が推定できますが、代表的なのは、「隠れ栄養失調」「鉄(+たんぱく質)」不足です。
以前の記事で糖質制限で痩せるメカニズムについて説明しました(『糖質制限でどんどん「痩せる」のはなぜか? 秘密は体のハイブリッドエンジンにある!』)。糖質制限すると脂肪酸(ケトン体)を燃やすように変わるから体脂肪が減るというものです。糖質は細胞に取りこまれると酸素なしで簡単にエネルギーとして利用できます。だから「がん細胞」も糖質が大好きです(『糖質制限+ビタミンC」は「がん」の新たな治療法となり得るか?』 )。
それに対して脂肪酸(ケトン体)を燃やしてエネルギーとして利用するにはミトコンドリアのTCA回路を回す必要があります。ところが、日本人の女性ではこれがうまく回らない傾向があるのです。
生殖年齢(生理のある年齢)の女性は月経で血液を失いますし、貧血を指摘された経験のある方は少なくないと思います。赤血球が酸素を運搬するためにはヘモグロビンという鉄イオンを含む物質が一定量必要で、これが不足すると貧血(酸素不足)になります。
貧血では脳をはじめとする全身の臓器がうまく機能せずに、倒れる、動けなくなるなどの命にかかわる事態が起こります。ですから、我々の体は、鉄分の在庫が少ない場合、それを赤血球に優先的に回してなんとかしようとします。このため、赤血球以外の細胞には十分な鉄分が行きわたらない状態の女性が生まれやすいのです。
実は、ヘム鉄といわれる鉄イオンを中心に持つ構造の酵素は、ミトコンドリアの中にもあり、それが十分量存在しないとTCA回路がうまく回りません。つまり、糖質制限してケトン体エンジンを回そうとしても、もともと鉄不足でミトコンドリアがうまく回らないのでケトン体を利用できずにエネルギー不足になるのです。
これは「隠れ栄養失調、潜在的な鉄分不足」であると考えることができます。だから、女性がいきなり厳しい糖質制限を始めると体調不良で挫折するケースが少なからずあるのです。