「糖質制限で糖尿病」はタンパク質と脂質不足(depositphotos.com)
この数年で「糖尿病の予防・改善=糖質制限」は、日本でも一般的に理解・認知されてきた。ところが先日、『週刊ポスト』(9月22日号)に「糖質制限すると糖尿病になる」というセンセーショナルな見出しが踊った。
この記事では、2002年に271.2g (1日平均)だった炭水化物の摂取量が、2014年に255.8gまで減少した一方で、糖尿病患者は同時期に228万人から317万人まで増加した――という。
記事では、浜松医科大学名誉教授内科医の高田明和氏が「糖質制限が糖尿病の原因となっている可能性がある」とコメントし、こう説明している。
〈この12年間における「糖質制限ブーム」や健康意識の高まりで、日本人の糖質摂取量が1日平均15グラム減ったにもかかわらず、糖尿病患者はおよそ100万人も増えました〉
〈もちろん高齢化の影響もあるのかもしれませんが、それにしても糖質制限との「負の相関」が際立っている。この矛盾は、「糖尿病のパラドックス」と呼ばれています〉
「糖新生」から糖尿病になる!?
そして、「糖新生」に触れてその危険性を指摘し、糖尿病になる可能性に言及している。
〈糖質を制限すれば、体内から糖が無くなるわけではありません。体内の糖質が不足すると、脳が活動を維持できなくなるなど命にかかわる障害が出てしまう。それを防ぐために、筋肉を分解して糖を生み出す『糖新生』という反応が起こります〉
<低血糖状態から体を守るために、コルチゾールは糖新生と同時に、上げた血糖値を維持するために「インスリン」の効きを悪くして血糖値が下がるのを防ごうとしてしまいます。そうなると、今度はインスリンが効かなくなってしまう。その結果、血糖値を下げられなくなって、糖尿病になるという可能性が指摘されているのです>
「糖尿病患者100万人増加」は2極化したデータが混在
この記事はテレビ番組でも取り上げられ、一般の人々に「糖質制限は危険?」を印象付けた。
これに対して、「この記事は多くの人を誤解させます」と話すのは小倉台福田医院院長の福田世一医師。透析専門医や腎臓内科医として診療に携わってきた福田医師は、「生活習慣病の原因の多くは、糖質過多、タンパク質・脂質不足の食生活。カロリーの摂り過ぎが原因ではない」として、「MEC食(肉、卵、チーズ)」による糖質制限の食事を指導している。
「MEC食」とは「こくらクリニック」(沖縄県那覇市)院長の渡辺信幸医師が提唱する食事療法だ。
①ひと口30回噛む。
②「MEC食」(肉:Meat・卵:Egg・チーズ:Cheese)をたっぷり食べて炭水化物を控える。
*参考記事【肉・卵・チーズをたっぷり食べて、ひと口30回噛むだけで痩せる!糖質制限に挫折したあなたへ】【離島医療から生まれた“究極のダイエット”~MEC食と噛むだけダイエット】
福田医師は自身でもMEC食を実践し、クリニックでは内科だけでなく外科・整形外科・小児科・皮膚科などすべての科に共通の治療方針としている。また、今年9月より四街道徳洲会病院(千葉県四街道市)で「MEC食外来」をスタート。保険診療による完全予約制の外来として、患者一人ひとりに応じた診療を行っている。
臨床の現場で糖質制限やMEC食を指導する福田医師は「糖質制限が糖尿病の原因となっている可能性がある」との報じ方にこう疑問を呈する。
「まず、12年間(2002~2014年)で糖質量が1日15g減って糖尿病患者100万人増加――には無理があります。糖質量15gは、茶碗一杯のご飯1/3もありません。この程度で糖質制限=インスリン分泌量が低下など、言ってほしくありません」
「『糖質制限』と称するなら、少なくとも糖質摂取量を1日200g未満であるべき。厚生労働省の国民健康・栄養調査をよく調べれば、『糖尿病患者100万人増加』は糖質を多く摂取している人と糖質を減らしている人の 2 極化したデータが混在していると考えるのが自然です」