連載「肥満解読~痩せられないループから抜け出す正しい方法」第6回

糖質制限で血中のケトン体値アップで生命の危機!? 危険なケトン体値とは?

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糖質制限で血中のケトン体値が上がると生命の危機!? 本当に危険なケトン体値はどのくらいか?の画像1

糖質制限で血中のケトン体値が上がると生命の危機!?(depositphotos.com)

 糖質制限をすると次の2つのことが起こります。

①脂肪を燃やして肝臓でアミノ酸からブドウ糖を作るようになる(糖新生)
②ブドウ糖ではなくて脂肪酸をエネルギーとして使うようになる

 だから、体脂肪がどんどん減り、痩せるのでしたね(参考:糖質制限でどんどん「痩せる」のはなぜか? 秘密は体のハイブリッドエンジンにある!

 このとき、肝臓では長い脂肪酸から短い「ケトン体」という物質を切り出し、利用しやすいエネルギー源として血流に乗せて全身の細胞に送り届けます。

 ケトン体には「アセトン」「アセト酢酸」「βヒドロキシ酪酸」の3つがあり、全身の細胞が使うのは後者の2つです(アセトンは呼気から蒸発して体外に出ます)。

 理想的な糖質制限(断糖)食である「釜池式」では、このケトン体の血中濃度が高い状態が維持されます、この状態を「ケトーシス」といいます。

医師の間では「ケトン体命を脅かす恐ろしい物質」だと考えられてきた

 さて、このケトン体ですが、医師の間では「命を脅かす恐ろしい物質である。血液中の基準値を超えてはいけない」と長らく考えられてきました。その理由は、1型糖尿病の人は感染症や大けがのとき、あるいはインスリンを打ち忘れたときに、「糖尿病性ケトアシドーシス」という大変怖い状態になってしまうことがあるからです。

 「アシドーシス」とは血液が酸性になることで、こうなると我々の体はおかしくなります。全身の倦怠感や頭痛、不快感から始まり、放置すると死の危険さえあります。

 糖尿病性ケトアシドーシスの場合、血液を酸性にしている犯人は血液中に充満したケトン体と考えられ、そのため血液中でケトン体の濃度が高くなるケトーシスは、非常に危険なことだと糖尿病専門医の先生たちは恐れおののいてきたわけです。

 糖質制限を推進している糖尿病専門医の山田悟先生が糖質摂取を一食20g以上に設定しているのも、血中ケトン体値が基準値(125~130μmol以下)よりも高くなるのを避けたいからです(参考:「糖質制限」では「どのぐらい食べて」いいのか?釜池式・江部式・山田式の違いを徹底解説)。
 しかし、ケトン体って本当にそんなに怖いものなのでしょうか?

胎児・乳児は「ケトン体」の中で育つ

 糖質制限を早くから実践されてい宗田哲男先生という産婦人科医がいらっしゃいます。宗田先生自身も2型糖尿病で、糖質制限を実践して有効性と安全性を確信し、それを妊娠糖尿病や糖尿病合併妊娠の血糖管理に活用されていました。

 そして、糖質制限すると母体血のケトン体が高値になるが、それでも何の問題もなく胎児は育つし、出生後の発育も正常で母親の血糖管理は申し分ないと、学会発表されました。

 今でこそ糖質制限はアメリカ糖尿病学会が安全性と有効性を認める食事法ですが、宗田先生が成果を発表した時は糖尿病専門医の先生たちから罵詈雑言を浴びせかけられたそうです。

 そんな宗田先生は、ケトン体値の簡易測定器が販売開始されたのので、さっそく調べてみました。すると、糖質制限していない普通の妊婦さんの出産後の胎盤・臍帯血や人工中絶した胎盤の組織では、驚くほどケトン体濃度は高かったのです。たとえば、分娩時の臍帯血(分娩時の赤ちゃんの血液)では300~2500μmol、平均700μmol以上です(出典:「ケトン体」こそ人類史上、最強の薬である)。

 この結果は、離乳食を食べる前の乳児についても同様で、母乳栄養で育っている赤ちゃんのケトン体値は成人の基準値を超える高いものでした。生後1か月でも200~700μmol、平均350μmol以上でした(出典:同前)。

 胎児や乳児では全身の臓器が育ちますし、脳神経系の発達も盛んな時期ですから、きちんとした栄養が最も必要な時期です。その時期に赤ちゃんの血液の中に豊富に存在することから、ケトン体は赤ちゃんの体にとって重要な栄養素であると考えられます。

 実は、世界でも有名な栄養学の本『ヒューマン・ニュートリション』にもそのことは明記されているそうです(出典:同前)

 この事実、どう考えますか? 赤ちゃんの血液の中で高いのが当たり前のケトン体値が高いのにおびえて、血糖値を上げる糖質を食べさせるのって、なんかおかしくないですか?

吉田尚弘(よしだ・ひさひろ)

大阪市内のクリニック勤務。1987年 産業医科大学卒業、熊本大学産婦人科に入局、産婦人科専門医取得後、基礎医学研究に転身。京都大学医学研究科助手、岐阜大学医学研究科助教授後、2004年より理化学研究所RCAIチームリーダーとして疾患モデルマウスの開発と解析に取り組む。その成果としての<アトピー性皮膚炎モデルの原因遺伝子の解明>は有名。
その傍らで2012年より生活習慣病と糖質制限について興味を持ち、実践記をブログ「低糖質ダイエットは危険なのか?中年おやじドクターの実践検証結果報告」を公開、ドクターカルピンチョの名前で知られる。2016年4月より内科臨床医。

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テストステロン(男性ホルモン)の存在に着眼し、AGA(男性型脱毛症)治療、男性皮膚治療、男性更年期、前立腺がんのサポート、男性不妊など、男性の外見や内面の健康に関わる様々な治療を独自の視点から行うメンズヘルスクリニック東京(東京・丸ノ内)の小林一広院長。第3回目は「男性妊活・男性力」について。
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