連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」第32回

向精神薬「アモキサピン」の大量服用による自殺を考える〜患者・家族・治療医に求められる対応とは?

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向精神薬アモキサピンによる自殺を考える(depositphotos.com)

 私が10年ほど前に経験した、抗うつ薬を大量服用して服用後短時間で死亡した患者さんについて紹介しよう――。

 約2年前よりうつ病と診断され、某メンタルクリニックで治療していた26歳の女性。抗うつ薬アモキサピンを1日用量150mg、毎回2週間分処方されていた。

 同棲していた彼氏曰く、最近、抑うつ状態が激しく、長期間、家に閉じこもりがちであったとのことであった。ある朝、恋人が外出したのちに、患者はアモキサピンを85錠(1錠50mg、総量4250mg)を服用した。

 5時間後に帰宅した彼氏が、全身性のけいれん発作を呈し、意識消失している恋人を発見して、救急車を要請した。搬送時意識なく、呼吸は浅く、瞳孔は散大し、不整脈が頻発して、全身性のけいれんも持続していた。ICUで人工呼吸器管理下のもとで、強心薬などにて治療したが、心不全、呼吸不全、横紋筋融解症(注)による急性腎不全などを併発し、搬送後僅か16時間で鬼籍に入った。 

注:横紋筋融解症は急性薬物中毒にて急性腎不全を併発する要因となる病態。服用薬の作用により、筋肉の細胞が溶けて壊死が起こり、筋肉成分のミオグロビンなどが腎臓に取り込まれて、尿が出にくくなり、急性腎不全を起こす。手足のしびれや痛み、倦怠感、歩行不能、尿の色がワインのような赤褐色となり、尿量が減少するなどの症状を呈する。 

急性アモキサピン中毒とは?

   アモキサピンは、第2世代の抗うつ薬として、我が国でも精神科領域で用いられている。本剤は有効治療量と中毒量が非常に近いので、安全性には問題がある。

 一度に500mg程度服用すると、口渇、便秘、めまい、眠気などを訴え、1500m以上を服用すると、昏睡、けいれん発作、低血圧、重篤な不整脈、高体温、横紋筋融解症、急性腎不全などが引き起こされる。2000mg以上服用すると、致死的となる。死因は心臓死、呼吸不全、急性腎不全などによる。

 本剤は、血液透析などによる解毒・排泄は不可能である。農薬などの化学薬品中毒とは異なり、大部分の急性向精神薬や催眠薬の大量中毒例では、意識レベルの低下が主症状で死に至るケースは比較的稀である。

 しかし、アモキサピンなどの三環系抗うつ薬では、服用後、短時間でほぼ同時期に起こる、中枢神経と心臓、腎臓などへの悪影響が顕著であるため、極めて危険である。 

横山隆(よこやま・たかし)

小笠原クリニック札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認定クリニカルトキシコロジスト、日本腎臓学会および日本透析学会専門医、指導医。
1977年、札幌医科大学卒、青森県立病院、国立西札幌病院、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター助手、札幌徳洲会病院腎臓内科部長、札幌東徳洲会病院腎臓内科・血液浄化センター長などを経て、2014年より札幌中央病院腎臓内科・透析センター長などをへて現職。
専門領域:急性薬物中毒患者の治療特に急性血液浄化療法、透析療法および急性、慢性腎臓病患者の治療。
所属学会:日本中毒学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本内科学会、日本小児科学会、日本アフェレシス学会、日本急性血液浄化学会、国際腎臓学会、米国腎臓学会、欧州透析移植学会など。

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横山隆
若いうちのEDは動脈硬化注意のサイン~不妊の原因の半分は男性である!
インタビュー「目指せフサフサピンピン!男性専門クリニック」第3回・メンズヘルスクリニック東京・小林一広院長

テストステロン(男性ホルモン)の存在に着眼し、AGA(男性型脱毛症)治療、男性皮膚治療、男性更年期、前立腺がんのサポート、男性不妊など、男性の外見や内面の健康に関わる様々な治療を独自の視点から行うメンズヘルスクリニック東京(東京・丸ノ内)の小林一広院長。第3回目は「男性妊活・男性力」について。
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