連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」第29回 

恐ろしい低血糖脳症〜糖尿病治療薬「インスリン」を大量注射で自殺未遂!その重い代償とは?

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糖尿病治療薬の「インスリン」を大量注射して自殺未遂!(depositphotos.com)

 現在、我が国では、食生活の欧米化、運動不足などが誘因となって、糖尿病患者が爆発的に増加している。2012年の国民健康・栄養調査によると、糖尿病患者は実に950万人にも達しており、治療を受けていない人も含めると、その数はさらに多いとされている。

 今回は、最近、筆者が治療した、糖尿病治療薬で血糖降下薬として広く用いられている「インスリン製剤」を過量に自己接種したことによって起こった、低血糖脳症の患者のケースを中心に解説する。

急性インスリン中毒による低血糖脳症を発症し植物状態になった症例

 58歳の主婦は、精神科や心療内科の受信歴はなかった。約10年前に糖尿病と診断され、食事および運動療法、経口糖尿病薬の効果が不十分であったため、2年前よりインスリンの自己注射(朝12単位、夕8単位)で治療を開始し、その後の血糖値は100~170mg/dLと比較的安定していた。

 ある日、普段より夫婦仲が険悪だった夫と口論となり、夫が外出したのちにインスリン(即効性と持続性の混合型ヒトインスリン製剤)を発作的に全量を自ら皮下注射した。約20時間後に夫が帰宅して、台所で倒れていたのを発見。呼びかけにも応ぜず、付近にインスリンが転がっていたのを見つけ、救急車を要請した。

 搬送時は昏睡状態にあり、浅い呼吸を呈し、嘔吐した。体温は35.9℃と低下し、対光反射も鈍かった。血糖値は11mg/dL(空腹時の正常値は80~100mg/dL)と著明に低下していたので、ただちに高濃度ブドウ糖の点滴、呼吸、循環管理を行った。

 3日後、血糖値は100~150mg/dLと安定したが、10日間、意識は回復しなかった。その後、開眼したが、発語や言語理解が不能であり、食事も接取できなかった。寝たきり状態が続き、頭部MRI(核磁気共鳴画像法)にて、前頭葉を中心として広範囲の高信号領域を認めたため、不可逆性の低血糖脳症と診断した。結局、患者は、入院3か月後に慢性療養型病院に転入院した。

横山隆(よこやま・たかし)

日本中毒学会評議員(同学会クリニカルトキシコロジスト)、日本腎臓学会および日本透析学会専門医、指導医。1977年、札幌医科大学卒、青森県立病院、国立西札幌病院、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター助手、札幌徳洲会病院腎臓内科部長、札幌東徳洲会病院腎臓内科・血液浄化センター長などを経て、2014年より札幌中央病院腎臓内科・透析センター長。2015年8月に同病院退職。
専門領域:急性薬物中毒患者の治療特に急性血液浄化療法、透析療法および急性、慢性腎臓病患者の治療。
所属学会:日本中毒学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本内科学会、日本小児科学会、日本アフェレシス学会、日本急性血液浄化学会、国際腎臓学会、米国腎臓学会、欧州透析移植学会など。

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テストステロン(男性ホルモン)の存在に着眼し、AGA(男性型脱毛症)治療、男性皮膚治療、男性更年期、前立腺がんのサポート、男性不妊など、男性の外見や内面の健康に関わる様々な治療を独自の視点から行うメンズヘルスクリニック東京(東京・丸ノ内)の小林一広院長。第3回目は「男性妊活・男性力」について。
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