低侵襲の診断法として大きな意味を持つリキッドバイオプシー (depositphotos.com)
今日はシカゴに来て5年目の記念日だ。いろいろな想いがあって日本を飛び出し、矢のように時間が流れた。日本にそのままいれば、定年後の生活を考え始めていたのだろうが、米国の実情を知り、日本を遠くから眺め、日本のがん医療の将来に対する不安がますます募ってきた。
しかし、正直なところ、心の中には、「人の何倍も働き続けてきたのだから、もう、若い世代に任せて静かに過ごしたら」という私と「日本の患者さんのために、倒れるまで、なすべきことをすべきだ」という私が混在している。
歳を取ったためか、体調のいい日は頑張ろうと思うのだが、体調の悪い日は弱気になる。そんな時には、患者さんから頂いたメールや手紙を読み返しては自分を鼓舞している。
3月18日の大阪での講演会の際に10代のがん患者さんのお父様から、患者さんの手書きの手紙を頂いた。読み進めるうちに目が潤んできた。私の研究成果を待ち望んでいる人のために、重い荷を背負って歩き続ける責任があると改めて感じた。たとえ、それが一人であっても。
プレシジョン医療が医療費増加を抑制
話をプレシジョン医療に移す。がん医療の質の更なる向上のためにも、医療費増加抑制のためにも、がんのプレシジョン医療体制の確立が不可欠だが、全体像を俯瞰的に考えることのできる人材が日本には少ない。
先週の日本滞在中に、中国のiCarbonX・韓国のTheragen・米国のThermo Fisherの幹部たちと会合を持ったが、ヘルスケアからメディカルケア、そして生命保険・医療保険まで含めて幅広い議論ができた。しかし、日本人の研究者とは話がなかなかかみ合わない。自分の研究の延長戦上の議論しかできないように思えてならない。
(メディファックス ウェブ;医療の「希望」を信じてー米国からの便り(6)より)