できれば横になって「寝落ち」しよう
――座ったまま目を閉じてウトウトするだけでも違いますか?
できれば、横になったほうがいい。目をつぶっただけでは効果がないことは、睡眠中の脳波を調べる実験で判明しています。たとえ短い時間でも、意識がなくなる、いわゆる「寝落ち」すれば全然違います。
徹夜のときに「3分でも寝ると違う」と言う人もいますが、ある程度の効果を期待するには、最低でも10分~15分はほしいところですね。
――必ずしも、横になれる職場環境ではないと思いますが……
そこが、我々としては世間の事業者にお願いしたいところです。眠くて朦朧としたために事故が起これば、会社の責任になります。労働者の健康を守ることは、会社の利益にもつながるはずです。
横になるスペースに対する設備投資は、仕事の効率と業績アップでカバーできるのではないかと提言したいのですが、いかがでしょうか?
眠れないときは、あえて<寝床から出よう>
――夜勤に限らず、寝ようとしても眠れず悩む人はたくさんいます。このような場合、どうすればいいとお考えですか?
はっきり言えるのは、眠れないときに布団に入って努力するのは無駄だということです。そういうときは、思い切って寝床から出たほうがいいですね。
たとえば、好きな音楽を聞くとか、あまり神経を刺激せずにリラックスできることをして、眠気が来るのをちょっと待つほうがいいでしょう。
ところで、寝床に入ってスマホをいじったりするのはやめたほうがいい。「寝床=寝る場所」でなくなると、スムーズに入眠できなくなる可能性があります。
睡眠というのは、非常にデリケートなもの。「ぐっすり眠ろう」と意気込んでも、うまくいきません。「いい睡眠」には、「起きている時間をどう過ごすか」が重要です。
これは働き方の改善でもあり、帰宅してから眠りにつくまでをどのように過ごすか、いかにリラックスできるかという、ライフスタイルにも関わってきます。起きている時間を大切にする――。実は、このことが安眠につながります。
(取材・文=里中高志/精神保健福祉士、フリージャーナリスト)
高橋正也(たかはし・まさや)
独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 産業疫学研究グループ部長。1990年、東京学芸大学教育学部卒業。医学博士(群馬大学)。労働安全衛生総合研究所で仕事のスケジュールと睡眠問題に関する研究に従事する。2000年、米国ハーバード大学医学部留学。共著に『睡眠マネジメント─産業衛生・疾病との係わりから最新改善対策まで』(エヌティーエス)がある。