クレゾール石鹸液による自殺未遂の実例
筆者は20年前、自殺目的でクレゾール石鹸液を経口摂取した79歳女性例を診察した経験がある。患者は早朝に50%クレゾール石鹸液を自宅から持ち出して、先祖の墓前で80mLを服用して自殺をくわだてた。
服用から2時間30分後に、墓地を通行していた人に発見され、救急搬送された。意識不明で、血圧は低下し、呼吸苦、チアノーゼ、けいれんを認めていた。
呼吸、循環管理、大量の点滴を行い、血液透析の一種である血液灌流法を3時間行い、クレゾールの血液中の濃度は317.4μg(マイクログラム)から102.5μgマイクログラムまで減少した。その後48時間後には9.9μgまで低下し、症状は緩和した。幸い10日後に退院できた。
石鹸液であるので界面活性剤が含まれているが、成分の分析はできなかった。クレゾール石鹸液は、60mL以上飲むと死亡することがある。また血中濃度が100μg以上で致死的であるといわれているが、この症例は無事に生存できた。