飲酒と最も強い関連性が認められた「乳がん」(shutterstock.com)
以前に「忘年会シーズン直前!『休肝日』は政府による造語だった~その意味、何日、適量、効果は?」という記事を配信したが、「休肝日」の必要性を説く際に「節約効果」をあげる記事を見かけることがある。
1日当たりの酒代が300円として「週1の休肝日」=毎月1200円、年間1万4000円、「週2休肝日」ならば年間3万円弱も浮きますよ、それで小旅行が出来ますよ――といったような推奨記事だ。
しかし、晩酌時に嗜む程度の休肝日不要派でさえ、「1年でたったの3万円程度しか得しないのであれば、週2の我慢しがいはないね」と正直思うだろう。節約奨励でストレス解消のガソリン補給を控えられるほど、酒好きは素直ではないのだ。
飲酒による乳がん患者が増加中
では、こんな知見を突き付けられたら、酒好きの方々は、どう反応するだろう?
つまり、世界保健機構(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)は、アルコール飲料を「グループ1の発がん性物質」に分類しているという事実を知ったとしたら……。
「2012年、飲酒が原因で発生した新規がん患者数が世界で70万人超に上った」という国連機関調査のニュースは、先の記事でも触れた。
もう少し踏み込んで紹介すると、同研究班が「飲酒する人」と「飲酒しない人」のがん発症リスクを比較検証し、新規がん症例数の約5%、年間死者数の4.5%に「アルコールが関与している」との実態結果を算出したのだ。
論文の共同執筆者である研究員のひとりは、「飲酒によってがんが引き起こされる恐れがあるというこの事実に、いまだ多くの人が気づいていない」と、警戒心を表明している。
なかでも女性層により知ってほしいのは、飲酒と最も強い関連性が認められたのが「乳がんの新規診断例だった」という点だ。
それがアルコールに起因する全がん症例中の4分の1以上を占めたそうだから、女性愛酒家としては侮れない。
前出の研究員も「乳がんの発症リスクが、アルコール類の摂取量に比例して増加するのは明らかである」と強調している。次いで関連が強く指摘されたのは大腸がんであり、こちらは全体の23%を占めた。
一方、飲酒とがんによる死亡の関連性においては、最も濃厚なのが食道がんであり、こちらでも次点に大腸がんが座った。
しかしながら、飲酒が絡むこれらの発症機構については、同研究者間でも「正確には分からない」そうである。