連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」第25回

温泉に注意!!北海道の温泉旅館で「硫化水素中毒」が原因で脳機能障害!清掃業などでも死亡事故多数

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温泉の「硫黄臭」に注意(shutterstock.com)

 2014年10月、北海道足寄町の温泉旅館旅館「オンネトー温泉 景福」で、入浴中だった宿泊客の男性が「硫化水素ガス中毒」に見舞われ、現在も脳機能障害を併発していることが今年になって環境省の調査で判明した。

 硫化水素は水素の硫化物で、腐卵臭のある無色の有毒気体だ。硫黄を含むたんぱく質が腐敗したときに生じ、火山ガスや鉱泉中に含まれる。各種金属塩の水溶液に通ずると特有の色をもつ硫化物を沈殿させるので、分析試薬として利用されている。

 硫黄泉の温泉施設では、硫化水素濃度の適正基準が浴槽の湯面上方10cmで20ppm、浴室の床から上方70cmで10ppmを超えないように設定されている。しかしこの温泉旅館では、数か所の地点での測定値が、前者では50~200ppm、後者では80~190ppmと、きわめて高かった。

 濃度20ppm以上であると、嗅覚の麻痺、眼の損傷、呼吸障害による咳、痰の排出が認められ、長時間硫化水素に暴露されると、気管支炎、肺炎、さらには肺水腫に進展する。350ppmを超えると生命の危険が生じ、700ppm以上では短時間で昏倒し、呼吸停止し死に至る、きわめて恐ろしい中毒である。 
 

硫化水素中毒は、空気より重く、水に溶けやすい

 硫化水素は、無色で腐乱臭があり、空気より重く、水に溶けやすい性質がある。したがって温泉施設では、硫化水素の含有量を低く抑えるために、注入は湯面より上部に設置し、温泉を空気に触れやすくして、浴槽内の濃度を上昇させないことが求められている。

 しかしこの温泉旅館では、浴槽の底に注入されていたため、浴槽内の濃度が高値になったものと思われる。

 環境省の統計では、温泉の浴槽内における中毒が原因の死亡例や重体者の報告は認められない。ただし、2005年に秋田県の温泉では、旅館の近くの雪のくぼみの中で4名が硫化水素中毒となり、うち3名が死亡するという痛ましい事故があった。また2015年には、同じ秋田県の別の温泉で、作業中であった3名の男性が死亡している。

横山隆(よこやま・たかし)

日本中毒学会評議員(同学会クリニカルトキシコロジスト)、日本腎臓学会および日本透析学会専門医、指導医。1977年、札幌医科大学卒、青森県立病院、国立西札幌病院、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター助手、札幌徳洲会病院腎臓内科部長、札幌東徳洲会病院腎臓内科・血液浄化センター長などを経て、2014年より札幌中央病院腎臓内科・透析センター長。2015年8月に同病院退職。
専門領域:急性薬物中毒患者の治療特に急性血液浄化療法、透析療法および急性、慢性腎臓病患者の治療。
所属学会:日本中毒学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本内科学会、日本小児科学会、日本アフェレシス学会、日本急性血液浄化学会、国際腎臓学会、米国腎臓学会、欧州透析移植学会など。

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