温泉での硫化水素中毒発生を防ぐために
硫化水素中毒の労働災害発生状況については、厚生労働省労働基準局の統計によると、平成6~25年には72件あり、業種別では清掃業が27件、製造業が25件、建設業が12件。死亡者数は53名であった。
平成25年には、漬物を保管したビットの中に入って漬物を搬出していた時に意識消失し、2名が死亡。また有機物除去を目的に汚水槽内で作業中に意識消失し、救助に向かったもう1人も二次災害に巻き込まれ死亡した事件もあった。そのほか、下水道管内での作業中の事故、養豚場の糞尿をためる貯湯槽内での作業中の被災例が報告されている。
致死率が高い硫化水素中毒による労働災害を未然に防ぐためには、硫化水素濃度測定などの作業環境の点検、換気、送気マスクの装着などを徹底させることが必要である。
日本には硫黄泉を含む多数の良質の温泉があり、私たちを心身ともにリラックスさせてくれる。
しかし、温泉旅館のみならず、その付近には、硫化水素中毒が発生する危険性の高い場所がたくさん存在することを忘れてはならない。さらに、行政機関などが、浴室内の硫化水素の濃度管理や換気に関する厳しい基準の設定、施設への調査を徹底することが必要であろう。