「脳腸相関」は良好ですか?(shutterstock.com)
現代社会と切っても切れない関係にあるストレス。現代を生きる人のほとんどが何らかのストレスを抱えているといっても過言ではない。
ストレスをなくすためには、その原因となるものを減らすことだが、それが仕事や人間関係ともなると、そう簡単に遠ざけることができない。では、いかにしてストレスを軽減するか? 最近注目されているのが、ストレスと腸内環境の関係だ。
腸と密接な関わりのあるストレス
これまでの研究で、腸は単なる食物の消化吸収のためだけにあるのではなく、人体の中で最大の免疫組織であり、多くの神経・内分泌系組織が集まっている場所でもあることがわかっている。それゆえ「腸は第2の脳」と呼ばれるようになった。
緊張すると、お腹が痛くなったり、下痢をしたりという経験をしたことのある人は少なくないのではないだろうか? 逆に、腸の調子が悪いと脳は不安を感じるようになり、それが徐々に調子がよくなってくると気分もリラックスして、夜もよく眠れるようになる。
これは、腸と脳とがネットワークで密接につながっており、お互いの刺激が自律神経や内分泌、免疫系を通じて双方向に伝わるためなのだ。このような脳と腸の密接なかかわりは「脳腸相関」とよばれている。
精神的なストレスを受けて、腹痛や下痢、便秘を繰り返す「過敏性腸症候群」は、その代表格。精神的なストレスがたまると、腸はその影響をダイレクトに受けて働きが悪くなり、悪玉菌が増え、免疫力も低下する。
しかし、脳からのストレスが腸内環境に働きかけられるだけでなく、反対に腸内環境からストレスに働きかけることもできる。つまり、腸内環境を整えれば、脳にかかるストレスを軽減できるということだ。
ストレスを緩和する乳酸菌
このような推測を裏付ける研究もおこなわれており、乳酸菌によって腸内環境を整えることでストレスが軽減することが、いろいろな実験で明らかにされてきている。
たとえば、医学部の学生にとって解剖実習期間中はストレスがたまる時期だが、乳酸菌発酵乳を4週間にわたって摂取してもらったところ、解剖実習中に増加する不安や不眠スコアが改善された。また、乳酸菌発酵乳を摂取することで、唾液中のコルチゾールというストレスホルモンの増加が抑制されることも証明された。
さらに、あるラットには水を、別なラットには乳酸菌を14日間与え、最後の5日間、ケージの底面から1.5cmの高さまで水をはって浸水ストレスを加えた。その結果、水のみを与えられていたラットでは、ストレスホルモンである血中コルチコステロンが増加し、免疫機能が有意に低下。一方、乳酸菌を与えられていたラットは、血中コルチコステロンの増加はゆるやかで、免疫機能の極端な低下は抑えられることが確認された。
ちなみに、ストレス軽減に関連する乳酸菌には、BE80株、SBL88乳酸菌、OLL2809株、C-23ガセリ菌などがある。