【病気の知識】

更年期障害

この記事のキーワード : 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

更年期障害とは

 更年期、難しい言い方をしますと「生殖期(性成熟期)と非生殖期(老年期)の間の移行期をいい、卵巣機能が衰退し始め消失する時期にあたる」となります。分かりやすくいえば、子供を産める時期から産めなくなる時期、医学的にいえば、排卵がなくなり閉経後数年までの期間といえます。この時期は概ね、45~55歳(閉経の前後5年間)にあたります。

 これは、小児期、思春期と同様、一生の間のある年代の時期を指します。ですから、この時期を超えた女性は皆さん更年期を経験したことになります。ちなみに、日本では閉経の年齢はだいたい50歳頃です。

 「更年期に現れる多種多様の症候群で、器質的変化に対応しない自律神経失調症を中心とした不定愁訴を主訴とする症候群をいう」とされます。例えば、「腰痛」を訴える場合、椎間板ヘルニアや変形性脊椎症など原因(器質的変化)になる病気がもとにあり、症状となります。ところが腰の骨も筋肉も異常がないにも関わらず症状(器質的変化に対応しない)がでてきます。さらに、症状が一つではなく沢山でてきます。

 しかし定義に関しては現在もまだ明確な基準はなく、意見の一致が見られていません。ですから、男性の更年期障害などといった(男性はかなり高齢の方でも子供を産ますことができます)言葉もでてきます。

原因は

 1976年の国際閉経期会議では更年期障害の発症に関係する成因は、大きく3つに分けられました。まず第一は卵巣の機能低下による老化、第二は性格構造に基づく心理的因子、第三は社会文化的因子による環境の影響です。これらは単一で現れるのではなく、互いに重なり合って作用します。

 例えば、ご主人が会社で偉くなり、帰宅が遅くなる、子供が社会人になり家を出る、奥様は家で独りぼっちになった場合、趣味やサークル活動があればいいのですが、ご主人と子供一筋の方にとっては一人取り残された様になり落ち込みます。

 これを空巣症(カラスしょう)または空の巣症候群(からのすしょうこうぐん)といい、更年期障害の原因の一つとなります(心理因子と社会因子)。

 老化は全ての女性に起こる生理的な変化ですが、性格と環境は人によって差があり、その感受性の違いから症状の有無や程度の強弱が異なります。

どんな症状

 更年期障害は極めて多彩な症状を訴えます。表は年齢別の症状です。症状は種々あり、さらに年齢により症状の訴えが異なります。

 例えば、40~45歳では、多い順から冷え・疲労感・のぼせですが、51~55歳では、のぼせ・疲労感・息切れの順になります。

 また、訴えは一つだけであることは少なく、多くは複数です。一つだけである場合は他の病気を疑う必要があります。例えば、先程の「腰痛」だけなら椎間板ヘルニアを真先に疑います。

どんな診断

 最初に行うことは、他の病気の除外です。このためには、血液による生化学検査や生体機能検査を行い、ホルモン検査以外は正常範囲にあることが必要です。

 ホルモン検査では卵胞ホルモンのEstradiol(E2)低値、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)の高値が認められます。

 ただ単に不定愁訴症状のみで卵巣機能が正常範囲にある場合は更年期障害とはいいません(多くの場合、自律神経失調症となります)。

 次に調査表による症状の把握を行います。更年期障害の調査表は、その評価を指数化し更年期指数として現すことがあり、代表的なものにKupperman indexがあります。これを日本人用に改変した安部の更年期指数、漢方薬の処方を考慮した麻生・小山の簡略更年期指数などを用います。最近、日本産科婦人科学会も新しい調査票を発表しました。

 更年期障害と鑑別を要する重要な疾患には精神神経疾患があります。最終的には精神科の専門医の診断を必要としますが、更年期外来では心理・性格テストを行います。最近はSDSやCMIといったテストが行われる場合が多いようです。

どんな治療法

 更年期障害と診断し、治療を行う上で考慮する点の第一は年齢に関しての問題です。現在、日本の平均閉経年齢は50.54歳です。私の経験では最高58歳で閉経を向かえた例を経験しています。更年期は閉経の前後5年間くらいを指すので、概ね45~55歳が対象年齢になります。

 治療法は大きく、薬物療法・心理療法・その他の療法に区分されます。薬物療法では、現在、ホルモン製剤を用いるホルモン補充療法(HRT: hormone replacement therapy)がよく使用されます。HRTはのぼせ・発汗・冷え・頭痛・疲労感・不眠・関節痛などには特に有効です。また効果は遅いですが副作用の少ない漢方薬もよく使用されます。心理療法は種々ありますが、定型的な方法はなく、個人の状態に応じた方法がとられます。いずれにしても、今後はカウンセリングが重要になると思われます。

 その他の方法では、自律訓練法などの特殊療法がありますが、普及はしていません。一般的には、スポーツによる運動療法の指導が行われます。運動療法の効果は、薬物には劣りますが心理的因子に有効で、日常生活の向上に及ぼす影響は大きく、更年期女性に積極的に勧められる方法です。

 更年期障害は、原因が一つとは限らず、複数の要因が関与している点の注意が必要です。最も重要な点は、原因が明らかでも他の要因の関与を考慮することです。問題点が老化・心理・環境の要因のどこにあるのかを評価する必要があります。そのためには更年期障害の治療に熟知した医師の診断を受けるのが早道と考えます。また、ご主人や家族の理解や支援も治療の一助となります。

バナー1b.jpeg
HIVも予防できる 知っておくべき性感染症の検査と治療&予防法
世界的に増加する性感染症の実態 後編 あおぞらクリニック新橋院内田千秋院長

前編『コロナだけじゃない。世界中で毎年新たに3億7000万人超の性感染症』

毎年世界中で3億7000万人超の感染者があると言われる性感染症。しかも増加の傾向にある。性感染症専門のクリニックとしてその予防、検査、治療に取り組む内田千秋院長にお話を伺った。

nobiletin_amino_plus_bannar_300.jpg
Doctors marche アンダカシー
Doctors marche

あおぞらクリニック新橋院院長。1967年、大阪市…

内田千秋

(医)スターセルアライアンス スタークリニック …

竹島昌栄

ジャーナリスト、一般社団法人日本サプリメント協会…

後藤典子