メタボな人が軽度認知障害から認知症に進行するリスクは4.25倍!
ちなみに「軽度認知障害」とは、大まかに言うと「ときどき物忘れがあるが、日常生活に大きな支障はない」状態である。これが「認知症」になると、もう独立した日常生活や円滑な人間関係は営めなくなる。
メタボリックシンドロームでリスクが増えるのは軽度認知障害だけではない。軽度認知障害から認知症へ増悪するリスクも高くなる。すなわち、軽度低下を認めた425名のうち、その後、認知症を発症したのは、メタボ群で2.16%、非メタボ群は0.52%だった。先述と同様、年齢や学歴などの影響を除去しても、メタボ群のリスクは4.25倍も高くなっていた。
なお今回の研究では、すでに認知機能低下リスクを上げることが知られている糖尿病についても検討している。2型糖尿病患者では年齢や学歴などの影響を除去しても、軽度認知障害発症リスクが非糖尿病患者の2.84倍にも及んでいた。この値はメタボリックシンドロームの1.46倍よりも大きい。ただし、軽度認知障害から認知症へ増悪するリスク増加は、2型糖尿病では2.47倍。こちらはメタボリックシンドロームの4.25倍の方が大きかった。
高齢者でますます問題になりつつある認知症
人口の高齢化に伴い、認知症は大きな問題となりつつある。冠動脈疾患大国である米国でさえ、80歳以上では、冠動脈疾患よりも認知症の発症率が高いと報告されるに至った 。
今回紹介したのは観察研究なので、メタボリックシンドロームと軽度認知障害、あるいは認知症の因果関係は不明だ。したがって、メタボリックシンドロームの改善が軽度認知障害抑制につながるかどうかも、本研究からは断言できない。
しかし少なくとも、メタボリックシンドロームが認知機能に良い影響を与えることはなさそうだ。やはりメタボリックシンドロームからは、早めに脱却しておきたい。
(文=宇津貴史:医学リポーター)