【病気の知識】

認知症

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監修:高橋伸明/福岡記念クリニック院長・脳神経外科医

どんな病気

 認知症とは、生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活が営めない状態をいいます。以前は、ボケとか痴呆と呼ばれていましたが、差別用語の問題があり、2004年から認知症と名称が変更になりました。知能が後天的に低下した状態の他に、記憶・見当識を含む認知の障害や人格変化などを伴った状態を指します。

 認知症の内訳は、アルツハイマー型認知症が50%、脳血管性認知症が20%、レビー小体型認知症が20%、その他の認知症が10%になります。

 アルツハイマー型認知症の原因は不明ですが、老人斑を構成するアミロイドβ・リン酸タウという蛋白質の脳細胞への沈着が原因との説が主流になっています。したがって、血液・髄液検査でアミロイドβを測定も行われてきています。脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血の後遺症で脳の機能が低下した状態です。大脳表面付近の病巣が100mlを超えると、認知症の出現頻度が増加します。また、海馬・視床・尾状核など重要な部位の病巣は、それが限局性であっても高次脳機能障害をきたすこともあります。いま話題のレビー小体型認知症は、幻視・妄想・認知機能の急激な変動などが特徴的な認知症で、パーキンソン病の症状も見られます。レビー小体型認知症は小阪憲司先生が発見され、壇ふみさんと一緒にテレビのコマーシャルに出演されていますし、相談e-65.netで検索もできます。慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症のように手術でよくなる認知症もあります。甲状腺機能低下症でも認知症となりますが、これも薬でよくなります。また、かってピック病といわれていた前頭側頭認知症・ハンチントン病・脳の感染症(クロイツフェルト・ヤコブ病やHIV・梅毒)による認知症もあります。

 認知症は寝たきりの原因にもなります。寝たきりの原因の1位が脳血管疾患(38%)、2位が骨粗しょう症・骨折(13%)、3位が認知症(7%)、4位が難病(6%)、5位が老衰(5%)です。65歳以上の人口の15%は認知症といわれており、現在460万人前後の認知症患者がわが国に存在します。また、65歳以上の4人に1人が認知症とその予備軍で、80歳以上の40%は認知症といわれています。認知症は年間10%づつ増加し、団塊の世代が75歳となる10年後の2025年には700万人に達するといわれています。

どんな診断・検査

 症状は中核症状と周辺症状に分かれます。程度や発生順序の差はあれ、すべての認知症患者に普遍的に観察される症状を「中核症状」といいます。記憶障害と見当識障害(時間・場所・人物の失見)・認知機能障害(計算力の低下・判断力低下・失語・失認・失行・実行機能障害)などからなります。

 全ての患者に普遍的に表れる中核症状に対し、患者によって出たり出なかったり、発現する種類に差が生じる症状を「周辺症状」といいます。近年では特に症状の発生の要因に注目した表現として「行動・心理障害」とも呼ばれます。主な症状としては、幻覚・妄想・徘徊・異常な食行動(異食症)・睡眠障害・抑うつ・不安・焦燥・暴言・暴力)・性的羞恥心の低下(異性に対する卑猥な発言の頻出など)があります。

どんな診断・検査

 まず、認知機能検査を行います。これには長谷川式簡易知能評価やMMSE(Mini-Mental-State-Examination)が行われます。30点満点で21点以下は認知障害がある可能性が高くなります。脳波検査は脳の機能を見るよい検査方法ですが、確定診断にはなりません。次いで、CTやMRI検査の画像診断を行います。脳腫瘍・慢性硬膜下血腫・正常圧水頭症などの治療可能な疾患の検出が目的となります。脳萎縮の評価は、内側側頭部の萎縮の評価は間接所見として側脳室下角の拡大の程度で判定しますが、下角の拡大が常に海馬や海馬傍回の萎縮と合致するとは限りません。MRI検査でVSRADの撮像法があり、海馬の萎縮を描出できます。また、ポジトロン断層法(PET)による機能画像評価も行うことがあります。血液・脳脊髄液のアミロイドβの測定も行われてきています。

どんな治療法

 まず、手術でよくなる認知症があります。慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症は手術をすれば劇的に認知症は改善します。アルツハイマー型認知症には、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の塩酸ドネペジル(アリセプト)やNMDA受容体拮抗薬のメマンチン(メマリー)があります。レビー小体型認知症にはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の塩酸ドネペジル(アリセプト)が最近保険適応になりました。

 また、認知症患者には認知機能低下のみならず、不眠・抑うつ・幻視・妄想といった周辺症状があることが多く、向精神薬も有効なことがあります。薬物治療のみならず、認知症への心理・社会的な治療アプローチが必要です。認知症の精神症状・行動異常の中には、対応の仕方で改善できるものもあります。ご本人が今出来ること・興味を持っていることを活かし快適な環境づくりを心掛けます。過去に慣れ親しんだ歌や玩具・道具などを利用し、人生を振り返ることでご本人の自己認識の回復をはかる『回想法』などさまざまな療法があります。ご家族や友人とのコミュニケーションやデイサービス・グループホームでのおしゃべり・ゲームなども頭と心を活性化するための大切な刺激となります(相談e-65.net)。

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