連載「死の真実が“生”を処方する」第16回

毎年平均129人が学校で死亡!? オトナ目線で気づけない“子どもの脅威”

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 交通事故は、子どもにとっては依然として脅威です。

 私は以前、子どもにとってどのような夕イプの車が脅威となるか、交通事故総合分析センターのデータを用いて調査しました。歩行者交通死亡事故の加害車両を、SUV車、ワンボックス車、ボンネット車に分類し、それぞれについて12歳以下の子どもの占める割合を求めたのです。

 その結果、SUV車とワンボックス車は各4.8%で、ボンネット車の2.3%をはるかに上回っていました。重傷例についても同様に調べたところ、SUV車は20.0%、ワンボックス車は17.1%となり、ボンネット車の14.0%を上回っていました。

 なぜ、このような結果になったのか?

 ボンネット車との事故では、子どもは腰部や下肢にまず衝突されるため、最初の打撃で致命的な損傷を受けることはあまりありません。しかも、子どもの骨格は柔らかいため、大人では骨折を負うほどの外力でも軽傷ですむこともあります。一方、SUV車では、ちょうどボンネットの先端の硬い部分が、ワンボックス車ではフロントパネルの硬い部分が頭部に作用することから、最初の衝撃で致命的損傷を負うケースが多いことがわかりました。交通事故では、自動車と衝突して路面にたたきつけられることで致命傷を負うと思われがちですが、最初の打撃で重度の損傷を負ってしまうのです。

 また、事故の起こりやすさにも関係しています。しばしばニュースで、親が自宅付近を運転中にわが子をはねたという報道を聞きます。SUV車では、子どもが前後左右の角付近に立っていると、運転者からの認識が困難、死角があるのです。車体が高い自動車では、どうしてもこのようなことが起こってしまいます。もちろん、事故にはいろいろな要素が絡んでいますが、子どもにとっては、ボンネット車に比べてSUV車やワンボックス車のほうが脅威といえるでしょう。

 平成26年の15歳未満の子どもの人口は1633万人で、昭和57年以降、33年連続で減少。人口に占める子どもの割合は12.8%で、人口4000万人以上の30カ国中では最低。ちなみに、この割合が最も高いのは沖縄県で17.6%、2位は私が住んでいる滋賀県で14.8%です。

 大人の目線では子どもの脅威が何か、気づかないことがあります。「安全を確保している」と言っているのは大人であって、子どもにとっては安心して暮らせる社会とは言い切れないのではないでしょうか。子どもの割合が少ない日本だからこそ、「子どもの目線」で、その脅威を払拭していこうではありませんか。


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一杉正仁(ひとすぎ・まさひと)
滋賀医科大学社会医学講座(法医学)教授。厚生労働省死体解剖資格認定医、日本法医学会法医認定医、専門は外因死の予防医学、交通外傷分析、血栓症突然死の病態解析。東京慈恵会医科大学卒業後、内科医として研修。東京慈恵会医科大学大学院医学研究科博士課程(社会医学系法医学)を修了。獨協医科大学法医学講座准教授などを経て現職。1999~2014年、警視庁嘱託警察医、栃木県警察本部嘱託警察医として、数多くの司法解剖や死因究明に携わる。日本交通科学学会(理事)、日本法医学会、日本犯罪学会(ともに評議員)など。

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