貧困が子どもの学力だけでなく脳の発達にも悪影響があると判明

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子どもの貧困が脳の発達に影響!?shutterstock.com

 貧困が小児の脳の発達に影響を及ぼし、学力を低下させる可能性があるという。貧困層の子どもは、学力に関連する脳領域の灰白質が10%も少ないことが、「JAMA Pediatrics」7月20日号に掲載された研究で報告された。

 研究著者で米ウィスコンシン大学マディソン校のSeth Pollak氏は、貧困は「社会的」問題にとどまらず、生物医学問題でもあると指摘し、米国では2013年の時点で公立学校の生徒の51%を貧困家庭の子が占めていることからも、この知見は重要な意味をもつと述べている。

 これまでの研究で、生活の貧しい子は学校での成績が低い傾向があることが示されていた。この原因が脳への物理的影響にあるのかを確認するため、Pollak氏らは4~22歳の発達段階にある389人を対象としてMRIを分析し、脳全体のほか、前頭葉、側頭葉、海馬の灰白質の量を評価した。灰白質には神経細胞の大部分が含まれており、その他の部分(白質など)が脳内の情報伝達を担うのに対し、灰白質では、見る、聞く、記憶、感情、話す、意志決定、自己制御などの活動が生じるとPollak氏は説明している。

 米国の法廷貧困レベルの1.5倍(4人家族で3万6,375ドル)の家庭で生活する小児は、脳の重要な領域の灰白質が通常よりも3~4%少なく、法廷貧困レベルを下回る(同2万4,250ドル)と灰白質が8~10%少なかった。このような子どもたちは標準化したテストの成績が平均4~7ポイント低く、この点差の20%までは脳の発達低下により説明できる可能性があると、研究チームは推定している。

 Pollak氏によると、貧困に関連する多くの問題が脳の発達の遅れに寄与するという。低所得層の子どもは、たとえば耳に入る単語の数、読書やゲームの機会が少ないなど、脳の成長に寄与する刺激を受けにくい。また、ストレス、睡眠不足、過密状態、栄養不足などの因子が脳に影響を及ぼす可能性もある。

 研究の付随論説を執筆した米ワシントン大学医学部(セントルイス)教授のJoan Luby 氏は、「現時点で公衆衛生上の措置を取るべき十分な科学的根拠がある」と述べ、早期に対処すれば高い効果が得られ、費用効率もよいと指摘している。Pollak氏とLuby氏は、すべての子どもたちが決まった家と寝床、十分な栄養、刺激的な教育や社会活動、ストレスなく一緒に過ごしてくれる親を与えられる必要があるとし、「種を蒔いても水や肥料を与えなければ庭は育たない。子どももそれと同じ」と述べている。

過去最悪を更新した日本の子どもの貧困率

 翻って日本はどうか? 昨年、厚生労働省が発表した国民生活基礎調査によると、2012年のわが国の「子どもの貧困率」は16.3%となり、過去最悪を更新、はじめて社会全体の貧困率16.1%を上回っている。実に子どもの6人に1人の割合で貧困にあえいでいることになる。子どもの貧困率とは、平均所得の半分に満たない世帯で暮らす18歳未満の子どもの割合で、特に世帯の1割弱を占めるひとり親世帯では、約6割の子どもが貧困に陥っているという。