連載第11回 死の真実が“生”を処方する

戦時下の非人道的な人体実験、その教訓から医学・医療の倫理問題を考える

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アウシュヴィッツ強制収容所での大量虐殺には医師も関与 shutterstock.com

 この夏も終戦の日を迎えました。

 そもそも医学の進歩には「生きた人間を対象とした研究」が不可欠ですが、戦時下では、それを盾にとった非人道的な人体実験が行われていました。今回はその史実を振り返り、医学・医療の倫理について考えてみましょう。

戦争犯罪で注目された医師の倫理問題

 第二次世界大戦中に行われた最大の悲劇のひとつは、ポーランド南西部のアウシュヴィッツ強制収容所におけるナチス・ドイツが行ったユダヤ人の大虐殺です。150万人以上が犠牲になったこの虐殺には、兵士だけでなく医師も関与していました。

 さらにヒトラーは、「T4作戦」と呼ばれる安楽死政策(本当に安楽であったかは不明ですが)も行っています。これは「優生思想」に基づくもので、1939年から1941年までに、約7万人の障害者や難病患者が「生きるに値しない生命」として抹殺されました。

 この政策を行うにあたって、ヒトラーは医師に「致死法」を研究させています。具体的には、一酸化炭素、モルヒネ、自動車の排気ガス、麻酔薬などの人体に対する作用を研究させていたのです。

 1941年、ナチス・ドイツは、ポーランド国内に10か所のユダヤ人絶滅収容所を作り、毒ガスなどで集団虐殺を行いました。この集団虐殺はドイツが降伏する1945年まで続けられ、ナチス・ドイツが殺害したユダヤ人は、ポーランドのほか、ロシア、ハンガリー、チェコスロバキアなど多くの地域に及びました。

 これらの収容所で虐殺されたユダヤ人は、医師たちが研究した致死法によって殺されたのです。また、虐殺時にガス室のレバーを開閉していたのも医師です。そして、死亡を確認していたのも医師です。このような戦争犯罪に医師が加担していたことは、紛れもない事実なのです。

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