「狂犬病」発症後の死亡率はほぼ100% 発生地域への渡航の際は予防接種を

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狂犬病発生国への渡航には予防接種を

 狂犬病の年間死亡者推定数は全世界で約5万5000人。うちアジアが3万1000人、アフリカが2万4000人となっている(世界保健機関 2004年調べ)。

 日本国内では1920年代に年間3500件発生していたが、1922年に犬のワクチン接種が義務付けられてからは年間数件まで激減した。ところが太平洋戦争の開戦により、予防接種が疎かになった戦中戦後は、年間1000件にまで発生数が増えている。

 1950年代に狂犬病予防法が施行されてからはほぼ撲滅された。1953~1956年までに国内で5人が死亡して以後は、国内が感染源である死者は出ていない。というのも野良犬を隔離し予防注射をした犬の登録を徹底するなどしたからだ。感染した犬の数は1953年に176頭だったのが、1956年には6頭までに減り、その後、報告はされていない。例外的に狂犬病による死者を出したのは、前出ネパールとフィリピンからの帰国者の3例だけだ。

 私はインド旅行中に犬に噛まれたことがあるが、学校で飼われている番犬でワクチン接種済みの犬だったので事なきを得た。念のため、狂犬病ワクチンをすぐに注射してもらったが、それでも数カ月の間は発病するのではと恐れ驚いた。

 狂犬病発生地域で犬などに咬まれた場合は、発症を予防するためワクチン接種が必要だ。出来るだけ早く接種を開始する必要があり、初回のワクチン接種日を0日として、3日、7日、14日、30日及び90日の計6回皮下に接種する。

 狂犬病は日本国内ではまず心配する必要のない病気である。しかし衛生環境の整っていないアジアやアフリカへ渡航する機会がある場合、狂犬病の予防接種を受けておいた方がいい。また現地で動物に接触し傷を作ってしまった場合、大量の石鹸と水で傷となった部分を洗い、ただちに医者にかかり、ワクチン接種を行うべきだ。前出のWHOのデータによると、発病前にワクチンを接種した者の推計は1500万人。処置を間違わなければ充分に救える病気なのだ。
(文=西牟田靖)

西牟田靖(にしむた・やすし)
ノンフィクション作家。1970年大阪生まれ。神戸学院大学法学部卒。日本の領土問題や、戦後の植民地・戦地からの引揚問題など、硬派なテーマを取材執筆。著書に『僕の見た「大日本帝国」』『誰も国境を知らない』『本で床は抜けるのか』『わが子に会えない 離婚後に漂流する父親たち』など。

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