連載「眼病平癒のエビデンス」第18回

イチロー引退で注目の「翼状片」、充血改善の市販点眼薬は要注意…充血や異物感で視力低下も

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市販されている充血改善用目薬には要注意

 翼状片の治療として、充血や異物感が強い時には、ステロイド剤など消炎作用のある点眼薬を用います。しかし、このような点眼治療は、あくまで症状軽減の対症療法であり、翼状片が治癒することはありません。

 また、充血をとる効果をうたった市販の目薬もありますが、このような点眼薬にはたいてい血管収縮剤が含まれており、使用にあたっては注意が必要です。点眼すると、血管を強制的に収縮させ、充血が引き白くなります。しかし、見かけだけ白くなっても、病気そのものを良くしているわけではありません。しかも、充血が収まると病気が治ったと誤解してしまうかもしれませんし、炎症の程度が判断できなくなってしまいます。また、血管収縮剤を連用していると、薬の効果が切れたときに、かえって充血してしまうという「リバウンド現象」がおきます。

 さらに、眼科を受診する前に点眼すると、充血が見られないため、正しい診断ができなくなる可能性があります。このように、血管収縮剤をむやみに使用することには問題が多く、お勧めできません。

再発も多く、決定的な治療方法がない翼状片

 点眼で充血や異物感などの症状が軽快しない場合や、乱視で視力が低下したり、黒目の中央まで伸びてきたり、見た目が気になるなどあれば、手術治療が必要になります。単純に翼状片を切除する方法や翼状片を切除した部分を健常な結膜で覆う方法、再発予防のために低濃度の抗がん剤を塗布する方法など多くの術式が考えられています。

 多くの手術方法があるということは、裏返せば決定的な方法がないともいえます。翼状片は再発の多い病気であり、どのような方法で手術をしても、ある一定程度は再発することがあります。また、翼状片を切除するときに、角膜を一部削ることがありますが、この操作が新たな乱視の原因になることもあります。手術を受けたら乱視がきれいになくなると思っていると、期待はずれになることがあります。

 白目が黒目に入っているという見た目の問題や充血・異物感をおぼえるようになったら眼科で治療方法を相談してください。特に進行してしまうと、視力低下の原因にもなりますので、早めに受診することをお勧めいたします。

高橋現一郎(たかはし・げんいちろう)

くにたち駅前眼科クリニック院長。1986年、東京慈恵会医科大学卒業。98年、東京慈恵会医科大学眼科学教室講師、2002年、Discoveries in sight laboratory, Devers eye institute(米国)留学、2006年、東京慈恵会医科大学附属青戸病院眼科診療部長、東京慈恵会医科大学眼科学講座准教授、2012年より東京慈恵会医科大学葛飾医療センター眼科診療部長。2019年4月より現職。
日本眼科学会専門医・指導医、東京緑内障セミナー幹事、国際視野学会会員。厚労省「重篤副作用疾患別対応マニュアル作成委員会」委員、日本眼科手術学会理事、日本緑内障学会評議員、日本神経眼科学会評議員などを歴任。

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